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プロ注目左腕に起きた悲劇。亜細亜大の指揮官が悔やむ「パフォーマンス向上の落とし穴」 (2ページ目)

  • 中島大輔●文 text by Nakajima Daisuke
  • photo by Ohtomo Yoshiyuki

 それでも、指摘することは控えた。

「僕が言うと、否定することになるじゃないですか。松本は親と話して自分のお金で施設に行って、僕も行かせた。行かせたということは、『勉強してこい』ということです。松本は学んだことを信じて帰ってきた」

 生田監督はリーグ戦の開幕に向け、松本に調整登板の日を決めさせた。同時にヒジのストレスを測るため、「パルススローを早く持ってきてください」と代理店に頼んだ。

 だが、先にきたのは登板日のほうだった。試合序盤は好投していたものの、数イニング後、投球がいきなり山なりに変わる。明らかに異変が起こっており、交代を告げて聞くと「ちょっとプチっといきました」と。病院で検査を受けると、トミー・ジョン手術が必要と診断された。

「パルスが届いたのはその3日後です。松本に言っておけばよかったなって思いました......」

 生田監督が悔やんだのは、松本がそのフォームで投げるために必要な体づくりを欠いていたことだ。

「松本のように前にバーンって伸びて投げたいなら、もっと股関節から前足にグッとブレーキがかかるくらいでないといけない。そのためには後ろ足より前足のほうが強くないとダメ。そういうトレーニングをやっていたかと確認したら、『やらずにフォームだけを変えていました』と。どれだけの筋力があるかもわからないのに。で、帰ってきたらブチっていきました。だけど、否定はできないです。僕も行かせたわけだから......」

出力が上がったゆえのケガ

 松本は投げすぎで故障したわけではない。出力が上がり、その負荷がヒジにのしかかって靭帯が悲鳴を上げたのだ。

 動作解析担当のマネジャーの大出彩斗(2年)が、当時を振り返る。

「トレーナーの方がおっしゃっていたのは、『自分は"これくらい"の感覚でやっていたのが、急に以前より動くようになったから頑張りすぎて(ヒジの靭帯が)ブチっていったんじゃないか』と。いい球がいきすぎて、でも体がついてきていなかった。その時にパルスで測っていたら、それなりの数字が出ていたと思います。ワークロード(負荷量)が徐々に積み上がっていくのではなく、いきなりポンって跳ね上がったのかなと。負荷量は段階的に上げていかないといけないですからね」

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