大谷翔平が右腕に巻いている黒いベルトって何? リアル二刀流をサポートする秘密兵器

  • 中島大輔●文 text by Nakajima Daisuke
  • photo by Getty Images

【短期連載】令和の投手育成論 第10回

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 今季のメジャーリーグではロックアウトで春季キャンプが期間短縮された影響により、シーズン序盤、先発投手の球数が全般的に少なく抑えられた。

 ロサンゼルス・エンゼルスの大谷翔平を例にとると、昨季は1試合平均88.1球だったが、今季は初登板から「80→70→81」球。4月27日のクリーブランド・ガーディアンズ戦ではジョー・マドン監督から「90球目安」と送り出され、86球で降板している。

 こうした起用法にはどのような根拠があるのだろうか。裏づけのひとつと考えられるのが、大谷がふだんの練習でヒジに装着している"黒いバンド"だ。

大谷翔平が投球練習時に右腕に巻いている黒いベルトがパルスだ大谷翔平が投球練習時に右腕に巻いている黒いベルトがパルスだこの記事に関連する写真を見る

ヒジの負担を可視化

「パルススロー」(以下、パルス)----以前は「モータス」として知られたウェアラブルテクノロジーで、ヒジにかかるストレス値や腕を振る角度、速度を計測できる。日本で販売するオンサイドワールド社の八木一成ジェネラルマネジャーが説明する。

「センサーをアプリと連携させて、投げると数値が出てきます。パルスの目的を大きく分けると、投球フォームやトレーニングのために使うパターンと、負荷量を見ながらコンディショニングをつくっていくパターンとがあります」

 もともとIMGアカデミーでパフォーマンスアップや故障予防のために研究開発され、昨年、シアトルの野球トレーニング施設「ドライブラインベースボール」に買収された際に名称が変わった。

 パルスの画期的な点は、ヒジへの負荷を可視化できることにある。じつは昨季、大谷は右ヒジの張りで9月17日に予定されたアスレチックス戦の先発を前日に回避したが、"根拠"のひとつに「ACWR」があったのではと八木氏は考えている。

「ACWR」は「Acute Chronic Workload Ratio」の略で、急性負荷と慢性負荷から算出する数値だ。オンサイドワールドのHPから抜粋して簡潔に説明すると、以下の考え方になる。

<約1カ月間でつくり上げた身体の耐性(クロニックワークロード)では耐えられないほどの急激な負荷(アキュートワークロード)がかかると、ケガのリスクが高まる。ACWRはケガのリスクを軽減するうえでさまざまなスポーツで使用され、現在、注目されている指標のひとつ>

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