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大谷翔平が右腕に巻いている黒いベルトって何? リアル二刀流をサポートする秘密兵器 (2ページ目)

  • 中島大輔●文 text by Nakajima Daisuke
  • photo by Getty Images

 練習や試合を含めてピッチングにおけるACWRの数値を0.7〜1.3に保つと、ケガをしないラインと考えられている。専門家による論文が書かれ、今後のスポーツコンディショニングでは「スタンダードになっていく」と言われているという。

 以上を踏まえ、八木氏は昨年9月の大谷の登板回避をこう振り返る。

「おそらく昨季の大谷選手はACWRを1.3に維持しながらプレーしてきたのだと思います。試合日は強度が高いので、ワークロードの数値が上がります。これが1回加わるとACWRが高まるので、つまりケガのリスクが高まる。だから登板を1回飛ばし、次の先発機会に(コンディショニングを)もう1度合わせたのかもしれません」

 八木氏はパルスを踏まえて推察すると、大谷の番記者から聞いた情報を含めて続けた。

「大谷選手は投げたあと、筋肉痛がだいたいこのタイミングで出るというのがいつもあるらしいですが、その時に限ってふだんより遅れたそうです。この遅れ方がちょっと気になると。まさに感覚の部分ですが、おそらくパルスのワークロードの数値で疲労の蓄積具合を見ながら、『ここで投げるとリスクがある』と主観とデータを照らし合わせて決めたのではと思います」

スポーツテクノロジーの進化

 近年、スポーツにおけるテクノロジーの進歩は目覚ましい。コンディション管理はそのひとつで、先頭を走るのがラグビーだ。日本代表をエディー・ジョーンズ監督が率いた頃、"ハードワーク"を陰で支えたアプリに「ワンタップスポーツ」がある。疲労度やトレーニングの負荷量を管理し、コンディショニングやピーキングを最適化しようというアプローチだ。

 そのなかで象徴的な言葉として使われているものが「ワークロード」だ。日本語に訳すと「仕事量」という意味で、コンピュータやシステムにかかる負荷の大きさを表すIT用語でもある。

 たとえばマラソンを走る前には、練習で走行距離を徐々に伸ばしながら負荷に耐えられるように準備していく。レース本番までに求められるのは、どの程度まで負荷をかけるかというコンディショニング、そしてピーキングだ。

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