巨人・戸郷翔征は桑田コーチの指導をどう思っているか。「先発完投135球」と「ライン出し」 (3ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Ichikawa Mitsuharu(Hikaru Studio)

 ストライクゾーンの高め・低めの高低を横のライン、内角・外角のコースを縦のラインとして考える。真ん中周辺を避けて、左右高低の四角で囲うようにできたラインに投げる意識を持つ。ストライクゾーンの四隅をピンポイントに狙うよりも、ライン出しを意識したほうが投げやすいという考え方だ。

 戸郷は「とくにアウトコースのラインを外れなければ、打たれることもない」と重視している。

 急速なスピードで名門・巨人の主力投手になった戸郷だが、決してエリート街道を歩んできたわけではなかった。いや、むしろ戸郷という投手の根幹を成しているのは、「ドラフト上位の選手には負けたくない」という強烈な反骨心だ。

 インタビューをした当日、ともに先発マウンドに上がったのは、同じ高卒3年目の吉田輝星だった。吉田に対して特別な感情があったのか聞くと、戸郷はこう答えた。

「甲子園も見ていましたし、やっぱり『ドラフト1位』というのがひとつあったので、ライバル視する部分は大きかったですね。同級生でもありますし、負けたくない思いは強いです」

 かつて、戸郷はこんな思いを語っている。

「ドラフト1位で入って注目される選手と、ドラフト6位という下位指名で注目されずに入ってくる選手とでは気持ちも違います。やっぱり『やってやるぞ』という気持ちは、育成選手を含めて一番強いんじゃないかなと思います。だから、僕は6位でよかったんじゃないかなと」

 戸郷は2018年ドラフト会議で6位指名を受け、巨人に入団している。ドラフト前に10チーム近い球団から調査書が届いていた戸郷がドラフト下位指名になった大きな要因は、その特殊な投球フォームにあるのだろう。

 高校2年夏まではバックスイングの大きなサイドスローで、オーソドックスに近い投げ方だった。それからわずか1年で、戸郷は大きな変貌を遂げた。

「速いボールを投げたい」と取り組むうちに、無意識に腕を振る位置が高くなっていった。その結果、なんとも形容しがたい投球フォームが完成した。ノーワインドアップモーションから、大きく右腕を回してテークバックを取り、斜め上の角度から下へと叩きつける。初めて見た人には、強烈なインパクトを与えるダイナミックなフォームだ。本人の意識は「スリークオーター」だという。

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