【MLB】村上宗隆以外の若手も躍動するホワイトソックスの空気感 マイナーから昇格の西田陸浮も長所を発揮|現地ルポ (3ページ目)
【マイナーから昇格した西田陸浮という男】
さて、そんなチームに5月25日、西田陸浮がメジャー昇格を果たした。西田は2023年ドラフト11巡目指名。メジャーデビューまでにマイナーリーグで立った打席数は1389しかない。これほど少ない打席数でメジャーに到達する打者は、およそ3人にひとりしかおらず、その多くはドラフト上位5巡目までに指名された有望株たちだ。では、なぜ西田はこれほど早く昇格できたのか。答えはシンプルだ。結果を出し続けてきたからである。
西田はマイナー通算で出塁率.410を記録。今年初挑戦となった3Aでも33試合で驚異的な出塁率.454を残した。さらにマイナー通算110盗塁。長打力こそないものの、出塁し、走り、守るという自らの持ち味を武器に、着実に評価を高めてきた。
実は筆者は5月23日、ホワイトソックスの育成部長ポール・ジャニッシュに話を聞く機会があった。身長168センチの西田について尋ねると、ジャニッシュは即座に高い評価を口にした。
「陸浮は、うちの組織で一番と言っていいほどすばらしい人間性を持っています。おっしゃるとおり、フェンスを越える打球を量産するような、いわゆるフィジカルなパワーを持つ選手ではありません。ただ、今年の3A初戦でホームランを打っていますから、まったくパワーがないわけではありません」
そして、こう続けた。
「私が彼を表現するなら、『この球団で最も優れた野球選手のひとり』です。彼には周囲へ伝染するような力があります」
評価は技術面にも及んだ。
「陸浮は自分のスキルを誰よりもよく理解しています。そして、その持ち味を試合の中で実行する能力が非常に高い。守備面でも外野3ポジションすべてを守れますし、二塁も高いレベルで守ることができる。そして何より、出塁能力が非常に高い。今の野球では、それが大きな価値になるのです」
もっとも、西田は当初から昇格が約束されていた選手ではなかった。メルキン記者も昇格前、こう話していた。
「昇格のタイミングは予想が難しいです。彼はいい選手ですが、トップ30プロスペクトではありません。ただ、誰かがケガをしたり、病気になったり、不振になったりすれば、呼ばれる可能性はあります」
そして、その機会が訪れた。オフにFAで獲得したベテラン外野手オースティン・ヘイズが負傷し、さらにエバーソン・ペレイラも戦列を離れていたのだ。西田は昇格後4試合に出場し、9打数2安打。今後どれだけメジャーに定着できるかは、ヘイズやペレイラの復帰時期にも左右されるだろう。それでも、仮に今回再びマイナーへ戻ることになったとしても、長期的に見れば西田はすでにゲッツGMの構想の一部になりつつある。メルキン記者はこう語る。
「ホワイトソックスは再建の次の段階へ進みつつあります。今は勝率5割を超え、プレーオフ争いをしていますからね。陸浮のような選手は必要なんです。2005年の世界一チームにはスコット・ポドセドニックがいました。ポストシーズンまでホームラン0本でしたが、59盗塁を記録した選手です。もちろん、今の野球で"陸浮みたいな選手"だけを9人並べることはできません。でもひとりかふたりなら可能ですし、そういう選手がいることでチームの見え方は変わります」
ホワイトソックスは開幕前、ア・リーグ中地区で勝てるとは誰も思っていなかった。しかし今、チームは地区2位につけ、首位のクリーブランド・ガーディアンズを追っている。
村上がもたらした長打力と得点力。そして西田らが象徴する出塁力、機動力、多様性。ホワイトソックスは、有望株を集めるだけの再建段階から、自分たちなりの勝ち方を模索する段階へと歩み始めた。まだ完成されたチームではない。若い選手たちは成長の途中にあり、ロースターも今後大きく変わっていくだろう。それでも、球団には以前にはなかったものがある。未来への輪郭だ。
その輪郭の中心にいるのが、村上宗隆である。
著者プロフィール
奥田秀樹 (おくだ・ひでき)
1963年、三重県生まれ。関西学院大卒業後、雑誌編集者を経て、フォトジャーナリストとして1990年渡米。NFL、NBA、MLBなどアメリカのスポーツ現場の取材を続け、MLBの取材歴は26年目。幅広い現地野球関係者との人脈を活かした取材網を誇り活動を続けている。全米野球記者協会のメンバーとして20年目、同ロサンゼルス支部での長年の働きを評価され、歴史あるボブ・ハンター賞を受賞している。
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