【ワールドカップ】サッカー日本代表が舞台を去って始まった「本番」 決勝戦は別次元の戦いだった
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連載第101回
杉山茂樹の「看過できない」
筆者にとって1982年大会から数えて通算12回目のワールドカップ取材だった。その今大会はいい大会だったのか、悪い大会だったのか。過去と比較しやすい立場にいるので偉そうに言わせてもらえば、いい大会だったということになる。旅行者という立場を含めれば、さらに楽しかった。
物価は高い。日本円は驚異的に安い。取材にかかる経費に関しては大きな問題を抱えていたとはいえ、それを押してもあまりある面白いワールドカップ観戦取材だった。大会が深まるにつれ、もたげてきたのが"日本に帰国したくない病"で、このままの状態がより長く続くことを祈った。
振り返れば、前回カタール大会でも、前々回ロシア大会でも、同じ症状に陥った。治安に問題があった2014年ブラジル大会と2010年南アフリカ大会は、大会が深まるにつれ、滞在がきつくなっていった印象があるが、それを例外とすれば、ワールドカップ現地取材というのは心底楽しい、一度やったらやめられなくなる仕事だ。12回も続けてきた理由だ。
とはいえ、今大会は長く感じられた。決勝戦は開幕戦から39日目の出来事だった。日数にすればこれまでより10日間、長かった。スペインとアルゼンチンの両軍が相まみえる様子をニュージャージー・スタジアム(メットライフスタジアム)の記者席で眺めていると、日本が戦っていたグループリーグが遠い昔の出来事のように感じられるのだった。
テレビ解説のためワールドカップ決勝の会場を訪れた森保一監督 photo by JMPA 日本がモンテレイでチュニジアと対戦したのは決勝の29日前。そこで4-0で大勝したことで32強入りはほぼ確実になった。日本国内は大いに盛り上がったと思われる。しかし、目の前で繰り広げられている決勝戦を見ていると、それは同じ文脈で語ることが難しい、次元の違う大会の一場面に見えて仕方がなかった。予選と本大会の違いとでも言おうか。32強の試合で、ブラジルに守り倒そうとしたものの、あえなく敗れた日本代表。森保一監督がかねてから口にしていた二文字が「優勝」だ。あらためて呆れることにもなった。
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著者プロフィール
杉山茂樹 (すぎやましげき)
スポーツライター。静岡県出身。得意分野はサッカーでW杯取材は2022年カタール大会で11回連続。五輪も夏冬併せ9度取材。著書に『ドーハ以後』(文藝春秋)、『4-2-3-1』『バルサ対マンU』(光文社)、『3-4-3』(集英社)、『日本サッカー偏差値52』(じっぴコンパクト新書)、『「負け」に向き合う勇気』(星海社新書)、『監督図鑑』(廣済堂出版)、『36.4%のゴールはサイドから生まれる』(実業之日本社)など多数。


