ワールドカップ優勝まで20年 JFA名誉会長・田嶋幸三「育成をビジネスとして成立させないと勝てない」
日本サッカー この先20年の強化を考える
田嶋幸三(JFA名誉会長)インタビュー 後編
日本サッカーの進化について、田嶋幸三氏は育成をビジネスとして成立させることが重要だと言う photo by Torao Kishikuこの記事に関連する写真を見る 日本サッカーはこの先20年の強化をどうするべきか。長く強化・育成に携わってきた田嶋幸三JFA名誉会長にインタビュー。後編では育成システムのあり方や代表チームが強豪へ進化するポイントを聞いた。
>>前編「10代でJデビュー→欧州移籍という選手たちを集めたい」
【育成がビジネスになりクラブを進化させる】
――育成システムで変えたほうがいいのではというところはありますか?
田嶋 Jリーグのクラブでクオリティーに差が出てきているように感じます。例えば、Jクラブではなく高校のサッカー部を選択する選手がいます。コーチの数も多く、練習場も整備されていて、寮もある。それだけの投資をしているからです。三井寺眞(横浜F・マリノス)がいたFCフォーリクラッセ仙台(現FCフォーリクラッセTOHOKU)は財前宣之代表の下、指導に定評のあるクラブです。しかし、欧州ではバイエルンのようなクラブに優秀な選手が集約されていくのが普通です。地域で選手を育て、Jクラブがその中核にあるはずなのですが、現実には必ずしもそうなっていません。
Jクラブ所属の16歳以上の選手は実質的には「プロ」です。プロとして大人扱いすべきだと思います。プロ契約するかどうかは別にして、17、18歳でプロとして堂々とプレーできる選手を育てるためには、精神的にも成長を促していく必要があると思います。
――高校や街クラブのほうが指導力も含めて環境がいい、あるいは高校で奨学金が出るといった経済的なメリットもあるでしょう。日本の場合は育成体系が複雑で、欧州のようにスッキリしたものではないですね。
田嶋 代表を見ても高校サッカー出身の選手が多いですし、日本の良さもあると思います。大学へ行ってから成長してプロになる選手も多い。ただ、逆に言えばJユースで選手を育てきれていないという見方もできるわけです。実際、欧州では10代でプロデビューするわけですから。
大学経由で選手が成長するのは日本独特の良さではありますが、大学で育ててもらおうとなっている根底には、育成がビジネスに結びついていないという問題があるかと。10代でJデビューし、移籍して1000万円の収入がクラブにもたらされるとします。それならば3000万円で良いコーチを雇って、毎年1000万円の収入があるなら得になる。しかし、育成に投資することでリターンを得られるという構造ができていないので、本腰が入らないのが現状ではないかということです。クラブ間の配慮なのか、国内の移籍金も抑えられている。
W杯でFIFAに入ったお金はJFAにも回ってきます。選手を育成し、その選手が移籍した時には移籍金がその選手を育てたクラブにちゃんと入ってくる。サッカー界はそういうシステム、いわば持続可能なシステムになっています。チャンピオンズリーグに出場するような選手を5人、6人と輩出していけば、クラブは相応の収入を得られる。そうした仕組みを理解し、活用していくことが重要だと思います。
1 / 4
登録は簡単! チェックを入れてボタンを押すだけ 詳しくはこちら
著者プロフィール
西部謙司 (にしべ・けんじ)
1962年、東京生まれ。サッカー専門誌「ストライカー」の編集記者を経て2002年からフリーランスに。「戦術リストランテ」「Jリーグ新戦術レポート」などシリーズ化している著作のほか、「サッカー 止める蹴る解剖図鑑」(風間八宏著)などの構成も手掛ける。ジェフユナイテッド千葉を追った「犬の生活」、「Jリーグ戦術ラボ」のWEB連載を継続中。




