菊池雄星、メジャー2年目は逆をいく。アジャストよりも大事なこと (3ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • photo by Taguchi Yukihito

 しかもシーズン中盤からは疲れが球速に表われ、平均で151キロだったストレートが146キロになった。「5キロ落ちたらバッターのところへ届くのが150センチ違ってくる」(菊池)のだから、バッターを差し込めるはずがない。それでもシーズン終盤、菊池はある手応えを掴んでいた。

「あれだけ打たれておきながらなんだよと思われるかもしれませんけど、自分で思い描くボールが投げられた時にそれを打たれたかというと、そんなことはなかったんです。打たれるのは甘いボール、弱いボールで、そこまで自分の力がないとは感じませんでした。相手が嫌がるボールは少ないながらも投げられていましたし、それを増やしていけば十分に戦えると思いました。確かにたしかにメジャーはとんでもない世界だ、と思う反面、もしかしたら自分もとんでもない選手になれるんじゃないかと思ったんです」

 伸びしろを信じているという菊池は、昨年のシーズンが終わった翌日、シアトルにあるトレーニング施設、『ドライブライン・ベースボール』へ足を運んだ。重さの異なる6種類のボールを投げることで、肩やヒジに負担のかからない軌道を身体に覚えさせる。その結果、正しい軌道で強く腕を振れば速い球が投げられる──そうした考え方のもと、ドライブラインでは身体の約50カ所にセンサーを取りつけて動作解析を行ない、地面からの反発力をもらってスピードアップにつなげるためのフォームを模索する。菊池はそこでこんなアドバイスをもらったのだという。

「僕のテークバックは低い位置にあったんですけど、それを高いところへ引き上げるだけで球が速くなる、と断言してくれたんです。右足を着いた時、地面からの反発力をリリースへと伝えていかなきゃいけないんですけど、テークバックが低い位置にあると地面からもらった力をロスしちゃいます。でもテークバックを上げた状態で右足を地面に着ければ、ロスなく地面からの力をもらえる。そういうフォームに変えることで、球速がアップすることを実感できました」

3 / 5

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る