2020.03.05

イチローは現役時代と変わらぬ姿。
キャンプ地の「遊び」で見た打の原型

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • photo by Taguchi Yukihito

 フェニックスの空港からフリーウェイを乗り継いで、約30分。マリナーズがスプリングトレーニングを行なうアリゾナ州ピオリアの街は、とくに去年と何かが大きく変わった印象は受けない。マリナーズのクラブハウスもグラウンドも、この時期ならではの強烈な陽射しと爽やかな涼風、開幕を前にした緊張感を醸し出している。

 しかしひとつだけ、大きく変わったことがあった。マリナーズのクラブハウスにイチローのロッカーが見つからないのだ。

会長付特別補佐兼インストラクターとしてマリナーズのキャンプに参加しているイチロー 今までは練習前、練習後ともに、クラブハウスがメディアに開放されている時間、どこに行けばイチローがいるのか、だいたいわかっていた。しかし現役を引退し、選手でなくなった今、会長付特別補佐兼インストラクターのイチローはクラブハウスにロッカーがないため、どこにいるのかわからない。

 結局、練習が始まるのをクラブハウスの外で待っていたら、選手がゾロゾロとグラウンドへ向かっているというのに、イチローは彼らと一緒には出てこなかった。この日はビジターでオープン戦が組まれており、遠征組と居残り組でスケジュールが違うということもあったのだが、とにもかくにも、なかなかイチローを見つけることができないでいた。

 ところが、あるグラウンドを何の気なしに眺めていたら、明らかに見覚えのあるユニフォーム姿のシルエットが目に飛び込んできた。ターミネーターの如く瞬時に認識したその姿は、間違いなくイチローだ。背番号51のユニフォームを着て、ケージの横に立っているではないか。