菊池雄星、メジャー2年目は逆をいく。アジャストよりも大事なこと (4ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • photo by Taguchi Yukihito

 低い位置にあったテークバックを、高い位置まで引き上げる。そのために、ドライブラインの重いボールを使う。低い位置から重いボールを投げようとすると、肩やヒジに負担が掛かることを脳が察知し、勝手に高い位置にテークバックを持ってこようとする人間の防衛本能を利用するのだ。さらに菊池はテークバックを上げるために、キャッチャーの二塁送球をイメージして、捕ったら左耳に左手をぶつけるくらいのイメージを作った。10月から3カ月、そのフォームを繰り返し、繰り返し、意識させる。菊池が苦笑いを浮かべてこう言った。

「やっと、何も考えずにできるようになりました。最初はどれだけ意識してもできなくて、考えちゃっていたんです。テークバックを耳にぶつけたつもりなのに、映像を見ると全然、低い位置にある。いやいや、まだだよ、もっとだよって、その繰り返しでした」

 高い位置にテークバックを上げながら、それでも加速する距離を保てるギリギリの位置を模索しながら、菊池は理想の形をようやくつくり上げた。このメジャー2年目仕様のフォームは、さっそくストレートのスピードを上げてくれている。今年のオープン戦で菊池は95マイル(約153キロ)、96マイル(約154キロ)を当たり前のように叩き出し、スライダーも92マイル(約148キロ)、93マイル(約150キロ)が出ている。菊池がこう続けた。

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