【箱根駅伝2026】渡辺康幸の視点:力は拮抗も打倒・青学大を果たせなかったライバル校(早大、中大、國學院大) その差は地力ではなく「噛み合い方」
中大2区区間6位の溜池一太(右)と早大5区区間3位の工藤慎作 photo by Tsutomu Kishimoto
後編:渡辺康幸が振り返る第102回(2026年)箱根駅伝
2016年から箱根駅伝の第1中継車のテレビ解説を務める渡辺康幸氏(住友電工陸上競技部監督)の第102回大会総括。
後編では打倒・青山学院大と見られていた早稲田大、中央大、國學院大、駒澤大の戦いぶりと、想定外の快走を見せた順天堂大、不屈の魂で逆境を跳ね除けてシード権を手にした帝京大を中心に振り返ってもらった。
前編〉〉〉青学大の圧倒的強さの礎と黒田朝日の「5区・衝撃走」とランナーとして凄み
【力を出しきった早大の課題とは】
青学大の強さが際立った一方で、今回の箱根駅伝は、ライバル校にとっても「現在地」がはっきりと示された大会だったと思います。各校とも戦力は充実しており、条件さえ噛み合えば優勝を狙えるだけの力を持っていました。ただ、その「噛み合い方」で、青学大との差が明確に出た印象です。
往路2位、総合4位となった早稲田大は、持てる力をほぼ出しきった内容だったと言っていいでしょう。狙っていた往路優勝を逃した悔しさは残ったと思いますが、区間配置も無理がなく、個々の走りも安定していました。
来年度も有力な1年生が入学予定ですが、箱根で勝つためのカギを握るのは、やはり上級生です。エースの山口智規選手(4年)は卒業しますが、5区の工藤慎作選手(3年)、4区区間賞の鈴木琉胤選手(1年)をはじめ、3年生以下には力のある選手が揃っています。また花田勝彦監督が今回の結果を受けて、どのようなチームづくりを行なっていくのかがポイントになるでしょう。
それでも早大に関しては、毎年のように指摘される「もう一段階上」に行くための壁が、今回も浮かび上がりました。ここまで見てきた通り、今大会の早大は「失敗したから負けた」のではなく、「力を出しきったうえで届かなかった」。スポーツ推薦入学枠に限りがあるとはいえ、トップレベルの走力はある。それでも優勝争いに絡みきれない。
その差は、突出したエースの存在なのか、勝負どころで流れを引き寄せる経験値なのか。非常に答えの見えにくい部分ですが、ここを突破して全体のレベルアップを果たさない限り、「優勝候補」という評価から抜け出し、栄冠をつかむのは難しいと感じています。
「山の名探偵」と呼ばれる工藤選手はフィニッシュ直後こそ悔しさをにじませていましたが、翌日には「絶対に青学大を倒します」と力強く語っていました。12月下旬から調子が上がりきらなかったと聞いていますし、1年生の頃から5区で注目され続けてきたぶん、プレッシャーも相当だったと思います。開き直って考えれば、黒田朝日選手や城西大の斎藤将也選手(ともに4年)は卒業するので、来季はより自分の走りに集中できる環境になるはずです。
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著者プロフィール
牧野 豊 (まきの・ゆたか)
1970年、東京・神田生まれ。上智大卒業後、ベースボール・マガジン社に入社。複数の専門誌に携わった後、「Jr.バスケットボール・マガジン」「スイミング・マガジン」「陸上競技マガジン」等5誌の編集長を歴任。NFLスーパーボウル、NBAファイナル、アジア大会、各競技の世界選手権のほか、2012年ロンドン、21年東京と夏季五輪2大会を現地取材。22年9月に退社し、現在はフリーランスのスポーツ専門編集者&ライターとして活動中。

