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故障者リスト入りは吉兆か。
シーズン終盤に田中将大の価値は上昇する (3ページ目)

  • 杉浦大介●文 text by Sugiura Daisuke
  • photo by Getty Images

 空振りを取る頻度は一般的には成績に直結するだけに、今季の田中の成績不振は"ミステリー"とみなされてきた。そんな田中の課題のひとつは、リーグワースト4位タイとなる28被本塁打にある。HR/FB 率(フライがホームランになる確率)はメジャー1位の21.5%であり、失投が大飛球となり、そのままスタンドに運ばれてしまうシーンが目立っている。このところ、メジャーで話題にのぼってきた"飛ぶボール"と共に、田中のスプリット、スライダーの細かなコントロールの乱れがそこに影響してきたと見ることもできるだろう。

 もちろん今回の離脱が、さらなる感覚の狂いにつながるおそれも否定はできないものの、思わぬ"サマー・ブレイク"が適度な休養となり、本来のような制球の安定をもたらす可能性も高い。楽観論に聞こえるかもしれないが、田中は故障者リスト入り前の8試合で防御率2.89と復調気配だった。ここで失投が多少なりとも減るなら、終盤戦に向けて投球の質は向上していくはずだ。

 8月18日時点で65勝55敗のヤンキースは、東地区首位のレッドソックスと4ゲーム差の2位。今のところワイルドカード争いではトップにつけているものの、決して高レベルではない争いに望みを残しているチームはまだ多く、9月後半まで厳しい戦いが続くことが予想される。

 長い戦いを考慮するならば、田中は100%の状態に戻るまで無理をすべきではないという判断は合理的なものだった。

"So, what have you done lately?(それで、最近は何をしたの?)"が挨拶がわりのように使われるニューヨーク。今季はこれまで散々批判もされてきたが、それでも最も大事なシーズン終盤の9、10月の2カ月に活躍すれば、すぐに手のひらを返したように絶賛してもらえるだろう。そんなシナリオを現実のものにするべく、短い雌伏の時間を経て、田中にとってより重要なマウンドがやってくる。

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