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【高校野球】吉見一起と紡いだ絆 監督と築いた奇跡 金光大阪の名物部長43年の "最大のタイムリーヒット"とは? (3ページ目)

  • 谷上史朗●文 text by Shiro Tanigami

【5度目の甲子園は果たせず】

 櫻井にとって最後の大会となった昨秋は、まさに「これぞ金光大阪」と言える、しびれるような戦いの連続だった。逆転、サヨナラ、そしてまた逆転──。事前の戦力予想からすれば失礼ながら、大阪3位から近畿大会出場という結果は想像しがたいものだった。

 新チーム発足時、選手たちに向けて横井が口にした言葉が、その始まりだった。

「いよいよ3月末で櫻井先生が退職や。もう一度甲子園に連れて行って、最後の公式戦を甲子園で戦わせてあげたい。勝っても負けても、胴上げして送り出したい。そのためにも、まずは近畿大会。全員で力を合わせて行こうやないか!」

 普段からの信頼関係が築かれていなければ、選手の気持ちは簡単にはひとつにならない。しかし、こうした局面で一気に結束できるのが金光大阪というチームだ。見事な戦いぶりを見せた。

 大阪大会初戦は春日丘に10対0のコールド勝ちと好スタートを切ったが、その後は接戦の連続だった。関大一には3対2のサヨナラ勝ち、東大阪大柏原には4対3、箕面学園には4対1と、いずれも逆転で勝利。興国を3対1で下してベスト8に進出した。

 準決勝では大阪桐蔭に敗れたものの、2点差まで食い下がる粘りを見せる。続く3位決定戦では、相手部長が金光の教え子でもある太成学院大高に勝利し、近畿大会出場を決めた。

「ヨッシャーーッ!!」

 大会中、勝利が決まるたびにベンチには歓喜の雄叫びが何度も響き渡った。そのなかで、横井と櫻井は真っ先に手を取り合い、さらに──。

「秋はそこにハグも加わりました(笑)。本当に劇的な試合が続いて、選手たちがよくやってくれたおかげで、最後の最後にいい思いをさせてもらいました」

 試合後のベンチ裏では選手たちが涙を流し、横井も何度となく感極まった。部長のために、監督が純粋に涙するチームがどれほどあるだろうか。

 あとひとつ勝てば選抜出場が見えた近畿大会では、初戦で同大会優勝、神宮大会準優勝を果たした神戸国際大付に1対3で惜敗。通算5度目の甲子園出場で櫻井の勇退に花を添えることはできなかった。

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