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【高校野球】吉見一起と紡いだ絆 監督と築いた奇跡 金光大阪の名物部長43年の "最大のタイムリーヒット"とは? (2ページ目)

  • 谷上史朗●文 text by Shiro Tanigami

【最大のタイムリーヒット】

 エネルギッシュな一方で、はみ出ることはしないとも語る。

「いまでも、必要なものがあって部費を使う際には、どんな少額でも必ず事前に私の許可を取りに来るんです。『あとでもいいでしょう』とは決してならない。お酒もそれほど飲まないし、野球が趣味のようなもの。授業も担任業務もきっちりこなし、今は生徒指導部長も務めています。ひと言で言えば真面目。そこが私とも合ったんでしょう(笑)」

 高校野球の世界では、監督と部長の関係がこじれることも少なくないが、櫻井と横井の間にはそうしたトラブルは一切なかった。練習後のスタッフルームで「先に失礼するで」と櫻井が腰を上げると、横井やコーチたちから「お疲れさまでした!」と明るい声が返ってくる。そんな温かな空気が、最後まで変わることはなかった。

「横井に『こうしたらどうだ?』と口を出すことはほとんどなかったし、あいつも私に『こうしてください』と言ってくることはほとんどありませんでした。お互いに自由にやれていたと思います。もちろん教え子という関係もあったのでしょうが、しっかり立ててくれましたし、私自身に監督としての欲がなかったことや、選手として一流ではなかったことも、うまくいった理由かもしれません。

 でも、いい監督ですよ。だから今になって思うのは、金光大阪で野球部に関わるなかで、私にとって一番の仕事は横井一裕君に監督として白羽の矢を立てたことだった、ということです。これが私の野球人生の最大の"タイムリーヒット"だったと思っています」

 毎日、監督や部長の姿を見ている生徒たちは、「この人たちに嘘はない」「信頼できる」と感じていったのだろう。そうした信頼はやがて、監督、部長、スタッフが一枚岩となった空気としてチーム全体に広がり、選手たちにも伝わっていく。その積み重ねこそが、金光大阪野球部の伝統とも言える一体感や熱を生み出していったのだろう。

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