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【ドラフト】西武でプレーする弟を追って 無名の控え投手だった冨士隼斗がプロ注目の右腕になるまで (3ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro

「冨士の状態が悪いということではないです。相手(日本製鉄瀬戸内)の打線との兼ね合いを考えて、先発を決めました。冨士は次戦の先発か、タイブレークまでもつれ込んだ場合に投入する予定でした」

 先発起用された相馬和磨は、円熟味を増しているエース左腕である。隼斗も「真っすぐでも変化球でも空振りが取れて、自分にはできない組み立てができて、すごい先輩です」と相馬の偉大さを実感している。

【最大の武器は投手としての思考力と探究心】

 隼斗に残された公式戦でのアピールの場は、9月23日からの日本選手権関東最終予選を残すのみになった。初戦から強豪・日立製作所と対戦するハードな組み合わせになったが、隼斗は日本通運の先発マウンドを託された。等々力球場のバックネット裏には、スピードガンを構えるスカウトがズラリと並んだ。

 しかし、隼斗は日立製作所の清水大海にインコースのストレートを弾き返され、2ラン本塁打を浴びるなど3回までに3失点を喫する。4回以降は立ち直り、6回2/3を投げて7奪三振とまずまずの内容だった。だが、チームは終盤に決勝点を奪われ、3対4で敗退している。

 隼斗はこの試合を「最後のアピール」と位置づけていた。敗戦という結果を受け、どんな思いが去来するのか。そう尋ねると、隼斗はこう答えた。

「持っているものは出しきれました。あとは評価するのはスカウトの方々なので、そこはお願いするしかないですね」

 客観的に見ると、現段階での隼斗は「プロ即戦力」と言えるほどの評価は得られていないのだろう。だが、冨士隼斗という投手の本質は、「即戦力か否か」という評価軸では測れないように思える。

 隼斗の最大の武器は、投手としての思考力と探究心にある。

 2年前の6月に実施された大学日本代表候補合宿。明治大のエース右腕・村田賢一(現ソフトバンク)から、こんなエピソードを聞いたことがある。

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