サッカー日本代表のブラジル撃破に、万感のセルジオ越後「負けた言い訳をするブラジルの友人に言い返してやったよ(笑)」
セルジオ越後の「新・サッカー一蹴両断」(19)
決勝ゴールを決めた上田。セルジオ氏も「今、ノッてるね」と賞賛 photo by Go! Yanagawa
かねて森保一監督や選手たちが公言している「ワールドカップ優勝」がついに見えた⁉ 過去の対戦では一度も勝利がなかった"王国"ブラジル相手に、見事な逆転勝ちを収めたサッカー日本代表。おなじみのご意見番、セルジオ越後氏は、この歴史的な一戦をどう見た?
【こんな日が来るとはね。感慨深いよ】
ブラジル戦翌日にブラジルの友人から何件か電話があって、「(ブラジル代表は)ケガ人が多くてベストメンバーじゃなかったから」って、みんな負けた言い訳をするから「日本代表だって、ボランチと3バックは全員ケガでいなかったからベストメンバーじゃないよ」と言い返してやったよ(笑)。
確かに、ブラジルはGKアリソン、DFマルキーニョス、FWラフィーニャといった主力選手が故障で不在。4日前の韓国戦(ブラジルが5-0で勝利)から先発を8人も入れ替えていた。でも、日本だってケガ人だらけで、今回はキャプテンの遠藤航までケガでいなかったんだからね。
やっぱり勝つことはいいことだよ。カタールワールドカップでドイツ、スペインに勝った時のことを思い出すね。
日本代表の試合がある時、僕はいつもスポーツ紙にコメントを出している。この日はハーフタイムに一度、電話がかかってきて、0-2だったから「奇跡が起こることを祈るしかないね」と言っていたんだ。そうしたら逆転勝ちでしょ。本当に奇跡が起きた。
過去に一度も勝てなかったブラジルに勝った。初勝利だから奇跡だよ。しかも、0-2から逆転する劇的な展開。僕が日本に来てからもう50年以上経つけど、こんな日が来るとはね。感慨深いよ。
試合を振り返ると、前半の日本は苦しかった。立ち上がりの5分ぐらいはハイプレスで前からボールを奪おうとするけど、ブラジルのように技術がしっかりしている相手からは奪えない。奪えないから引いてしまう。そうなるとカウンターを狙おうにも、相手のゴールまで距離が遠いから、途中で奪われるか、ファウルで止められる。
結局、引いて守って、耐えて、耐えてという展開になってしまった。しかも、先制され、2点目も取られ、それでもまだ引いて守って、45分間引いていた。
でも、後半は違った。試合後に南野拓実が「前半2失点したから、失うものはなかった」と言っていたように、思いきって前からプレスを仕掛けた。それが相手DFのミスを誘い、南野のゴールで早々に1点を返した。あれが大きかったね。あの1点で流れが変わったよ。
2点目は途中出場の伊東純也のクロスに合わせた中村敬斗のボレー。そして3点目は上田綺世のヘディングシュート。伊東のコーナーキックもいいボールだったけど、上田のヘディングシュートは強烈だった。
前からのプレスがハマったし、奪ったボールをじっくりとつなぐのではなく、前に前にという攻撃的な姿勢がよかった。一方のブラジルは同点にされたあと、引き分けでいいやとならなかった。プライドがあるからね。リスクを冒して攻めてきた。それも日本のカウンターが生きた理由だ。
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著者プロフィール

セルジオ越後 (せるじお・えちご)
サッカー評論家。1945年生まれ、ブラジル・サンパウロ出身。17歳の時に名門コリンチャンスのテストに合格し、18歳の時にプロ契約を結び、MF、FWとして活躍した。「エラシコ」と呼ばれるフェイントを発案し、ブラジル代表の背番号10を背負った同僚のリベリーノに教えたことでも有名。1972年に日本リーグの藤和不動産(湘南ベルマーレの前身)から誘いを受け、27歳で来日。1978年から日本サッカー協会公認の「さわやかサッカー教室」で全国を回り、開催1000回以上、のべ60万人以上を指導した。H.C.日光アイスバックスのシニアディレクター。日本アンプティサッカー協会最高顧問。公式ホームページ【http://www.sergio-echigo.com】

