【ドラフト】西武でプレーする弟を追って 無名の控え投手だった冨士隼斗がプロ注目の右腕になるまで (2ページ目)
常時150キロ前後を計測する隼斗だが、ストレートで圧倒するタイプではない。隼斗は自身の投球スタイルについて、こう自己分析する。
「長いイニングを投げても球威が落ちないのは自分の武器だと思うんですけど、基本的には真っすぐに加えて変化球を効かせていくスタイルだと思っています」
【高校時代は7、8番手の控え投手】
隼斗と対戦経験のある打者から、こんな本音を聞いたことがある。
「ストレートはスピードガンの表示ほどは速く感じないです。でも、あの速いスライダーがやっかいですね。もしプロに行ったら、ストレートより変化球が武器になるんじゃないですか?」
140キロ前後で鋭く横滑りするスライダーは、打者の脅威になっている。同じく高速帯で落ちるフォーク、120キロ台のカーブも織り交ぜる。
この点でも、兄弟は非対称と言っていいかもしれない。弟の大和はストレートのキレが抜群だった一方、変化球の精度に課題を残しているからだ。
そして、野球選手として成熟していく過程も兄弟でまったく違っている。高卒でプロ入りした大和に対し、隼斗は遅咲きだった。
大宮東では7、8番手の控え投手。平成国際大で地道に肉体強化に取り組み、大学日本代表候補合宿に呼ばれるほどの投手に急成長した。それでも、大学4年時のドラフト会議では指名漏れを味わい、日本通運に入社している。
今年の隼斗は、「弟と同じ世界でプレーしたい」と意気込みどおりの進化を見せている。入社1年目はリリーフ中心の起用だったが、2年目の今年は社会人屈指の投手層を誇る日本通運で先発を任されるようになる。今夏の都市対抗南関東予選では、テイ・エステックとの決勝戦で先発。被安打1の快投で完封勝利を収めている。隼斗は「変化球の精度と、真っすぐのコントロールがよくなりました」と手応えを語る。
ただし、都市対抗初戦では登板機会がないまま、チームは初戦敗退を喫した。試合後、隼斗の起用法について問われた日本通運の澤村幸明監督は、こう語っている。
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