2025年のドラフト上位候補 創価大・立石正広が波乱の1年を乗り越えてたどり着いた新境地 (3ページ目)
つづく富士大との2回戦では2安打を放っただけでなく、盗塁や迅速なバント処理など走塁・守備でも輝きを放った。50メートル走で6秒18をマーク(光電管センサーによる計測)したように、俊足も隠れた武器なのだ。
立石が来年のドラフト戦線の主役になる可能性は十分ある。ただし、佛教大の試合後の会見で、記者からスカウト陣からの高評価を伝えられた立石はこう答えている。
「自分としては、評価されすぎじゃないかと思っています」
立石はまだ、自分のスラッガーとしての資質に確固たる自信を持っていない。こんな自己評価も語っている。
「自分よりもっと飛ばす人はいますし、チーム内でも特別飛ばせるわけじゃないですから。今も自分が『飛ばせる選手』だとは思ってないです」
最後に立石に聞きたいことがあった。今秋に見せたパフォーマンスは、「本来の自分に戻った」という感覚なのか、それとも「今までの自分にない新境地」という感覚なのか。すると立石は「うーん、どっちなんだろう......」と長考してしまった。
別の記者が「力を抜くという意味では新境地かな?」と助け舟を出すと、立石は「そうですね」とうなずいた。
立石は将来的なMLB志望を明かしている。「一番レベルが高い世界だから」というのがMLBを目指す理由だ。
立石がスラッガーとして頂を目指すなかで、どんな姿を見せてくれるのか。たとえ不振に苦しんだとしても、そのひと振りひと振りが養分になり、見る者にとってロマンを与えるはずだ。
著者プロフィール
菊地高弘 (きくち・たかひろ)
1982年生まれ。野球専門誌『野球小僧』『野球太郎』の編集者を経て、2015年に独立。プレーヤーの目線に立った切り口に定評があり、「菊地選手」名義で上梓した『野球部あるある』(集英社/全3巻)はシリーズ累計13万部のヒット作になった。その他の著書に『オレたちは「ガイジン部隊」なんかじゃない! 野球留学生ものがたり』(インプレス)『巨人ファンはどこへ行ったのか?』(イースト・プレス)『下剋上球児 三重県立白山高校、甲子園までのミラクル』(カンゼン)など多数。
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