京大野球部が本気で目指す「リーグ優勝」頭脳派チームは再び快進撃を起こせるか? (3ページ目)

  • 菊地高弘●文・写真 text & photo by Kikuchi Takahiro

「もう野球はこれが最後なんで、できることを全部やって、活躍して、チームのリーグ優勝につながればいいかなと思います」

 工学部電気電子工学科の小田は、部内で「野球と実験しかしてない」と評判が立つほど文武両道を貫いてきた。この夏場は大学院に進むための試験勉強にも追われていた。

「かしこい人は本当にすごいんで......。研究室にいて『かなわないな』と感じてしまいます。でも、院試もようやく終わったんで、あとは野球を頑張ります」

 大川琳久(りく/済々黌)は昨秋に外野のレギュラーに定着すると、最終戦の近畿大戦で逆転サヨナラ満塁本塁打の離れ業をやってのけた。昨秋はベストナイン受賞、今春も打率3割台とチームの中心選手として君臨している。

 この日の東大戦では右打席で泳ぎながら放ったライナーが、ライトフェンスを越える本塁打になった。

「あれは球場が狭かったから入ってくれただけで、近田さんからも『ライトフライや』って言われました。春も打てたのは自信になりましたけど、4回生(4年生)は打てなくて、下回生(下級生)に重責を背負わせてしまっていました。最後は4回生が意地を出して、下回生が気楽に打てるようにしたいですね」

 今春のリーグ戦、京大は関西大との開幕戦を細見の逆転サヨナラ本塁打で制したあとは10連敗。最下位に沈んだ。

 それでも主将であり、エースでもある水江は「優勝という目標はぶらさず、地力をつけることをテーマにやってきました」と胸を張る。

「確実に伸びていると思います。春よりも野球がうまい、強い京大になってきています」

 秋に向けて役者は揃いつつある。リーグ優勝を本気で目指し、京大野球部は9月2日の秋季リーグ開幕戦(近畿大戦)に臨む。

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最下位が定位置の京大野球部に2人の革命児が現れた。

1人は元ソフトバンクホークス投手の鉄道マン・近田怜王。

もう1人は灘高校生物研究部出身の野球ヲタ・三原大知。

さらには、医学部からプロ入りする規格外の男、 公認会計士の資格を持つクセスゴバットマン、 捕手とアンダースロー投手の二刀流など…… 超個性的メンバーが「京大旋風」を巻き起こす! 甲子園スターも野球推薦もゼロの難関大野球部が贈る青春奮闘記。 『下剋上球児』『野球部あるある』シリーズ著者の痛快ノンフィクション。

【目次】

はじめに 主な登場人物

第1章 元プロ野球選手の鉄道マン

第2章 京大で野球をやる意味

第3章 元生物部の「クソ陰キャ」

第4章 京大生はなぜケガが多いのか?

第5章 頑なに関西弁を拒む主将の改革

第6章 「ソルジャー」近大への復讐

第7章 野球ヲタ投手コーチの落とし穴

第8章 ヘラクレスの引退騒動

第9章 ラストゲーム

第10章 京大野球部が優勝する日

おわりに

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プロフィール

  • 菊地高弘

    菊地高弘 (きくち・たかひろ)

    1982年生まれ。野球専門誌『野球小僧』『野球太郎』の編集者を経て、2015年に独立。プレーヤーの目線に立った切り口に定評があり、「菊地選手」名義で上梓した『野球部あるある』(集英社/全3巻)はシリーズ累計13万部のヒット作になった。その他の著書に『オレたちは「ガイジン部隊」なんかじゃない! 野球留学生ものがたり』(インプレス)『巨人ファンはどこへ行ったのか?』(イースト・プレス)『下剋上球児 三重県立白山高校、甲子園までのミラクル』(カンゼン)など多数。

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