表舞台から消えたふたりの天才投手が苦難を経て大学デビュー 「世界一の野球選手になる」目標は変わらない

  • 菊地高弘●文・写真 text & photo by Kikuchi Takahiro

 自分の意のままにボールを操るのではなく、結果的にリリース時にボールが指先にかかればいい。そう考え方を変えると、少しずつ指先にかかるボールが増えていった。関戸は高校時代に西谷監督からかけられた言葉を思い出していた。

「考えなくていいところで考えて、考えるべきところを考えてないとよく言われていたんです。大学に入って自分を客観的に見られるようになってから、ようやく西谷先生の言っていた意味がわかってきたような気がします」

 久米島キャンプでの紅白戦では最速152キロをマーク。関戸は手応えを深めてオープン戦での初登板を迎えたのだった。

 先頭打者に対して初球から球筋が荒れ、3球連続でボール球を続けた。それでも関戸は焦ることなく、次のボールに向けて気持ちを切り替えた。ストライクを続け、最後は指にかかった149キロのストレートを突き刺して見逃し三振を奪った。

 課題はまだまだある。それでも、関戸の「世界一の野球選手」という目標は変わっていない。

「焦ることなく、でも休むことなく、やっていきます。大学3〜4年になった時に思い描いた投球ができるよう、準備していきます」

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【高校1年夏に衝撃の甲子園デビュー】

 関戸が対外試合初登板を果たした同日、新3年生の右腕・寺西成騎も対外試合初登板を終えていた。

 本来なら2イニングを投げる予定だったが、1回を2奪三振、無失点に抑えたところで交代が告げられた。その理由を辻コーチは苦笑交じりにこう語った。

「練習での投球より5〜6キロも速いスピードが出ていたので、念には念を入れて1イニングで止めておきました」

 この日計測した148キロは自己最速を2キロ更新する球速だった。登板後、寺西は興奮を隠すように、こう語った。

「純粋に『野球してるなぁ』となつかしかったですし、うれしかったですね」

 寺西が「なつかしい」と語るのも無理はない。なにしろ3年以上もの長い間、実戦マウンドから遠ざかっていたのだ。

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