表舞台から消えたふたりの天才投手が苦難を経て大学デビュー 「世界一の野球選手になる」目標は変わらない (5ページ目)

  • 菊地高弘●文・写真 text & photo by Kikuchi Takahiro

 美しい投球フォームは今も健在だ。そして、そのポテンシャルはまだ底を見せていない。寺西自身も「体ももう少し大きくなると思うので、自分に期待したいです」とはにかむ。

 関戸も寺西も、まだ大学野球の公式戦で結果を残したわけではない。また、今春のリーグ戦で戦力になれるかも不透明だ。辻コーチは「2人とも戦力になってくれたらありがたいですが」と前置きしつつ、こう続けた。

「2人とも目の前の段階をひとつずつクリアしていって、春のリーグ戦にいい形で入れればベストです。でも、僕は間に合わなくてもいいと思っています。彼らはすばらしいものを持っていますし、焦らずにやってきたことが次につながるはず。大学野球って、そんな場所だと思うんです」

 日本体育大では偉大な先例もある。大学2年時にトミー・ジョン手術を受けながら、社会人経由でプロ入りした大貫晋一(DeNA)である。大学野球のステージで結果を残せれば言うことなしだが、それがすべてではない。なかには野球選手としてのゴールがもっと先にある選手もいるのだ。

 関戸康介と寺西成騎という大器たちは、満天下にその力を見せつけるための大きな一歩を踏み出したばかりだ。

著者プロフィール

  • 菊地高弘

    菊地高弘 (きくち・たかひろ)

    1982年生まれ。野球専門誌『野球小僧』『野球太郎』の編集者を経て、2015年に独立。プレーヤーの目線に立った切り口に定評があり、「菊地選手」名義で上梓した『野球部あるある』(集英社/全3巻)はシリーズ累計13万部のヒット作になった。その他の著書に『オレたちは「ガイジン部隊」なんかじゃない! 野球留学生ものがたり』(インプレス)『巨人ファンはどこへ行ったのか?』(イースト・プレス)『下剋上球児 三重県立白山高校、甲子園までのミラクル』(カンゼン)など多数。

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