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令和版「スローカーブを、もう一球」。
西武台・増田優真は遊び心で開花 (3ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by kikuchi Katahiro

 となると、黒幕は捕手しかない。青藍泰斗に勝利した試合後、増田とバッテリーを組む伊澤走(いさわ・そう)に声をかけると、「配球は自分が考えています」という反応が返ってきて、少し安心した。なぜ増田が打たれないと思うかを聞くと、伊澤はこう答えた。

「球速は出ないんですけど、割り切ってインコースにどんどん攻められる強い心があるからだと思います。いくら遅くても、ギリギリまで厳しいコースを突かれたら、バッターは詰まりますから」

 増田本人によると最高球速は「125キロくらい」とのことで、ベンチ入りした西武台投手陣のなかでもっとも遅いという。そのストレートを生かすのがスローカーブである。石川との打席で用いた2球連続スローカーブを伊澤に振り返ってもらった。

「普通に投げたら打たれるバッターなので、あれくらいの遊び心が必要だと思いました。それにあれくらい遅いと、バットに当たってもホームランにはならないので。あわよくば打ち損じを誘って、シングルヒットなら全然オーケーという考えでした」

 つまり、結果的に石川にライト前ヒットを打たれたといっても、伊澤としては想定内だったのだ。

 伊澤の明確な意図がこもった「遊び心」と、増田のキレとコントロールと独特の感性。このバッテリーの共同作業で西武台は強打戦の猛威をかわしていたのだ。ちなみに伊澤に「人間・増田優真」について聞くと、「普段はナヨナヨしていて、不思議系ですね。ピンチにみんながマウンドに集まっても『(打線が)取り返してくれるっしょ!』って他人事みたいに言うんです」と言って苦笑した。

 伊澤に『スローカーブを、もう一球』の存在を知っているかを尋ねたが、「いえ、知りません」と目を丸くした。差し出がましいと自覚しつつも、「ぜひ大会が終わったら読んでみてください」と言わずにはいられなかった。きっと伊澤なら面白く読めるはずだ。伊澤は笑顔でうなずいてくれた。

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