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茨城にまたプロ注目の逸材右腕。
広島ドラフト3位の鈴木寛人に続くか

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Kikuchi Takahiro

 フィールドプレーヤーはそれぞれのポジションに散っているのに、マウンドには誰もいない。大詰めを迎えた試合の最終盤に、奇妙な沈黙が訪れていた。

 来春の選抜高校野球(センバツ)出場校選考の大事な材料となる秋季関東大会1回戦。常総学院(茨城1位)と健大高崎(群馬3位)の一戦は、4対2で常総学院がリードして9回表を迎えていた。

 だが、8回まで2失点と好投していた常総学院のエース右腕・一條力真(いちじょう・りきま)がベンチから出てこない。ライトで出場していたもう一人の速球派右腕・菊地竜雅(りゅうが)が一塁側ベンチからの声に反応して、準備を始めようとしたところで、ようやくベンチから一條が出てきた。

関東大会の初戦で敗れたが、素材のよさを見せつけた常総学院のエース・一條力真関東大会の初戦で敗れたが、素材のよさを見せつけた常総学院のエース・一條力真 この時、一條は「右ふくらはぎがつりそうになって」、治療中だったという。それでも軽症だったため、一條本人の希望で最終回のマウンドに立ったのだった。

 だが、結果は無情だった。先頭打者を抑えたものの、健大高崎の2番・戸澤昂平に二塁内野安打を許し、3番の1年生強打者・小澤周平には内角のストレートをとらえられ、右中間に同点2ラン本塁打を浴びた。さらに決勝のスクイズを決められて3失点。その裏を無得点で終え、常総学院のセンバツ切符は泡と消えた。

 常総学院にとっては、4季連続となる最終回での逆転負けになる。試合後、佐々木力監督の言葉には、やはり力がなかった。

「継投を考える場面もありましたが、(2番手の)菊地の調子があまり上がっていませんでした。ブルペンでのピッチングを見たのですが、ちょっと厳しいなと」

 一條と菊地の二枚看板が新チームの目玉だった。菊地は182センチ、89キロの厚みのある体から最速150キロを計測する剛腕。勢いのある投球スタイルで、1年夏から公式戦マウンドを経験していた。

 一方、一條は188センチ、75キロの長身痩躯の右腕。最高球速は143キロと菊地に及ばず、まだ体に力がないことは明らか。だが、この投手のしなやかな投球を見れば、ひと目で逸材ということは伝わるだろう。佐々木監督も「まだ線は細いですが、冬の間に成長できれば」と期待を込める。

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