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【MLB】最高クラスの成績でも納得せず メッツ・千賀滉大が追い求めるピッチングの世界線とは?

  • 杉浦大介●取材・文 text by Sugiura Daisuke

すでにリーグ屈指の投手の資質を備えている千賀滉大 photo by Getty Imagesすでにリーグ屈指の投手の資質を備えている千賀滉大 photo by Getty Images

後編:千賀滉大、メジャー3年目の現在地

右太もも裏の負傷で故障者リスト入りを余儀なくされたニューヨーク・メッツの千賀滉大だが、予定よりも早いペースでリハビリをこなしているという。

具体的な復帰の目処はまだ見えないが、あらためて今季、ケガをするまでの圧倒的な存在感を示していた千賀の成長、そしてそのピッチング哲学について、本人のコメントを中心に検証してみる。

前編〉〉〉「30試合連続3失点以下」の存在価値

【「調子がいいぞ、は、すぐに手に入れられるものではない」】

「ケガの直後から(練習では)投げ続けられていたのはよかった。まだ2週間も経っていないのにもうマウンドに立ち、力強く投げているのはいい兆候だ」

 ニューヨーク・メッツのカルロス・メンドサ監督が6月23日、千賀滉大に関して残したそんな言葉からは安堵と期待感が感じられた。

 千賀は右太もも裏の故障で13日に負傷者リスト入り。翌日にMRI検査を受け、「右太もものグレード1の張り」と診断された。メンドサ監督はそこで「比較的よいニュース。軽度なので、おそらく2週間後に再検査する」と述べていたが、結果として当初の予定よりも早いペースで回復していることになる。

 今後徐々に投球の強度を上げることができれば、遠からずマイナーリーグでのリハビリ登板に臨むことになるのだろう。そこで重要なセットバックがなければ、7月15日に開催されるオールスターよりも前の復帰も不可能ではないかもしれない。長期離脱を危惧するファン、関係者も少なくなかっただけに、この展開は"うれしい誤算"とも言えるのではないか。

 さまざまなことが順調に進むと仮定して、千賀が後半戦でどんな投球を見せてくれるのかが楽しみになってきた。今季ここまで7勝3敗、防御率は離脱時点でメジャー1位の1.47という堂々たる成績。開幕前の目標のひとつとして挙げていた"162イニングの規定投球回数到達"も千賀本人はまだ、あきらめていないようで、ハイレベルのパフォーマンス継続に期待がかかる。

 もっとも、これほど圧倒的な数字を残しながら、実は前半戦での千賀は自身の投球に必ずしも満足していない様子だった。コロラド・ロッキーズを7回途中まで2失点に抑えて6勝目を挙げた5月31日の試合後、浮かない表情で残していた言葉は象徴的だった。

「調子がいいぞ(という感覚)は、そんなにすぐに手に入れられるものではない。今はすごい球、いい球を投げられない分、どうにかしていくっていうなかで、うまく試合を作っていけているんじゃないかなと思います」

 防御率1点台、2023年から"30試合連続3失点以内"という投球は実際に"試合を作る"というレベルを超えている。自身に設ける基準が高いからこそ不満ではあるのだろうが、それでも2025年の投球を見てきて、千賀の謙虚な言葉も理解できないわけではない。確かに今季は数多くの走者を出すイニングが見られ、そのせいで球数が増える傾向にはあるからだ。

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著者プロフィール

  • 杉浦大介

    杉浦大介 (すぎうら・だいすけ)

    すぎうら・だいすけ 東京都生まれ。高校球児からアマチュアボクサーを経て大学卒業と同時に渡米。ニューヨークでフリーライターになる。現在はNBA、MLB、NFL、ボクシングなどを中心に精力的に取材活動を行なう

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