【MLB】メッツ・千賀滉大への揺るぎない信頼 現在は負傷離脱中も「30試合連続3失点以下」の存在価値
離脱まで7勝3敗、防御率1.47をマークした千賀滉大 photo by Getty Images
前編:千賀滉大、メジャー3年目の現在地
右太もも裏の負傷で故障者リスト入りを余儀なくされたニューヨーク・メッツの千賀滉大。だが、それまではメジャー3年目の今季は開幕からリーグトップクラスの投球で相手を圧倒。チームの開幕ダッシュを支えた大黒柱の役割を十二分に果たしてきた。
幸い、ケガは昨季ほど長きにわたるものではないだけに、ファンやチームにとってもひと安心だが、ここではメッツの面々のコメントを中心に千賀の存在感を浮き彫りにする。
【メンドサ監督&主砲アロンソが見せた落胆】
「すごく調子もよく、順調に回復して来ているなと思います」
6月23日、米メディアとの囲み取材でニューヨーク・メッツの千賀滉大が残したそんな言葉は、ニューヨーカーが何よりも欲していたものだったのではないか。右太もも裏(ハムストリングス)の張りで負傷者リスト入りした千賀がメディア対応するのは6月13日に故障が発生して以降、これが初めてだった。
「このまま順調にいけば、(マイナーでのリハビリ)登板も近いのかなと思っています」。そんな言葉を聞く限り、エースの復帰は遠くなさそうだ。
昨年7月、左ふくらはぎを痛めた際にはプレーオフまでマウンドに戻ってこられなかったが、今季はそんなことはない。このポジティブなニュースはメッツの選手たちとファン、関係者を勇気づけるのに十分だったはずだ。
わずか10日前――。メッツの本拠地シティフィールドでのワシントン・ナショナルズ戦の試合後、メッツのクラブハウスには重苦しい空気が漂っていた。
千賀にアクシデントが起こったのは6回表のこと。ナショナルズの1番打者CJ・エイブラムズの一ゴロで一塁ベースカバーに入った際、ピート・アロンソ一塁手の送球がそれ、ジャンプして捕球。着地しながらベースを踏んだが、その瞬間、右太もも裏を抑えてグラウンドで苦悶の表情を浮かべた。直後、ベンチからもトレーナーなどが飛び出し、そのまま降板となった。
「ハムストリングの張りだ。彼はIL(故障者リスト)入りする。どうなっていくかは待ってみなければいけない」。カルロス・メンドサ監督は落胆を隠さずにそう述べ、結果的にケガの要因を作った形になったアロンソも明らかに意気消沈していた。
「ひどい気分だ。ベースボールのプレーを決めようとしただけ。できる限りの送球をしようとしたが、ああいう状況になってしまうのは最悪だ。千賀はここにいる仲間のひとり。誰かが倒れるのを見るのは辛い。シーズン中はいろいろなことが起こるものだが、あんなことは起こらなければよかったのに......」
アロンソは、通訳を通じて「(一塁ベースへの送球を捕球する)ジャンプの前のステップで(すでに異常を)感じていた。だから責任を感じないように」と千賀から伝えられていたという。それでも今季、鈴木誠也(シカゴ・カブス)、ユジニオ・スアレス(アリゾナ・ダイアモンドバックス)らとナ・リーグ打点王を争う主砲の心が晴れることはなかった。
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著者プロフィール
杉浦大介 (すぎうら・だいすけ)
すぎうら・だいすけ 東京都生まれ。高校球児からアマチュアボクサーを経て大学卒業と同時に渡米。ニューヨークでフリーライターになる。現在はNBA、MLB、NFL、ボクシングなどを中心に精力的に取材活動を行なう