【MLB】メッツ・千賀滉大への揺るぎない信頼 現在は負傷離脱中も「30試合連続3失点以下」の存在価値 (2ページ目)
【千賀離脱後にチームは失速】
負傷するまでの千賀は今季13度の先発機会で7勝3敗という好成績を残し、先発ローテーションを支える存在だった。防御率1.47は堂々のリーグ1位。日本人投手としては初の防御率タイトル獲得も夢ではなく、1年目以来のオールスター選出も濃厚だったのだろう。
千賀の活躍は、今季に限った話ではない。メジャー3年目でここまで20勝10敗、防御率2.53。2023年途中から"30試合連続3失点以下"はサイ・ヤング賞2度のジェイコブ・デグロムに次ぐメッツ史上2番目の記録であり、メジャー史上でも6番目の長さ(1920年以降)。マウンドに立っている限り、メッツの背番号34は現役屈指の結果を出してきた先発投手だと言っていい。
「フォークボールが彼の決め球であり、それに加えて96マイル(153.6キロ)必要ならば97マイル(155.2キロ)に届く速球を持っている。カッターもあるし、スイーパーもある。スローなカーブもあるし、どんな状況でも投げられる球がたくさんある」
メンドサ監督がそう述べていたとおり、32歳の右腕の信頼度は際立ってきた。それほどの投球を継続して来た千賀にとって、ほとんど唯一の難敵は健康をキープすること。1年目こそ12勝を挙げて新人王投票で2位、サイ・ヤング賞投票でも7位に入ったが、2年目の昨季は前述どおり、度重なる故障でシーズン中の登板は1度しか叶わなかった。急ごしらえの印象もあったプレーオフでも3試合で防御率12.60と不本意な成績に終わっただけに、迎えた3年目にかけるモチベーションは高かったはず。実際、その意気込みどおりに優れた成績を残していただけに、"千賀再離脱"のショックはチーム内外で大きかったのである。
千賀が倒れた6月13日の時点でのメッツは2位に5.5ゲーム差をつけ、ナ・リーグ東地区の首位を独走体制だった。直後、"千賀離脱ショック"のチームが7連敗、11戦中10敗と崩れ、一時はフィラデルフィア・フィリーズに抜かれて2位に陥落したのは驚きではなかった(注・現在は首位に0.5ゲーム差)。
2025年は本格派左腕のデビッド・ピーターソン(5勝4敗、防御率3.00)、新加入のクレイ・ホームズ(8勝4敗、防御率2.97)、グリフィン・キャニング(7勝3敗、防御率3.77)といった先発投手たちが予想以上の好成績を収めてきた。それでも大黒柱になり得る力を持った千賀の存在なしに、プレーオフでの上位進出は考え難いというのが正直なところだ。
だからこそ、千賀の最新の故障がそれほどの重症ではなかった意味はメッツにとって大きかった。早期のカムバックが可能ならば、またチーム全体が盛り上がっていける。もちろんまだ千賀がプランどおりに復帰できると決まったわけではないが、勝負の後半戦に向けて、メッツファンが心のよりどころを得たことは間違いないはずだ。
つづく
著者プロフィール
杉浦大介 (すぎうら・だいすけ)
すぎうら・だいすけ 東京都生まれ。高校球児からアマチュアボクサーを経て大学卒業と同時に渡米。ニューヨークでフリーライターになる。現在はNBA、MLB、NFL、ボクシングなどを中心に精力的に取材活動を行なう
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