「モデルジャンパーの肩書きはもう気にしない」 秦澄美鈴が女子走幅跳で新記録→周囲の見る目も変わって起きた心境の変化 (2ページ目)

  • 荘司結有●取材・文 text by Shoji Yu
  • 村上庄吾●撮影photo by Murakami Shogo

【積み重ねた世界の経験と見えた課題】

「良くも悪くも後を引く日本記録でした」と苦笑いする秦。だが、世界選手権前に日本記録を跳んだことで、メンタリティに良い変化も生まれていたようだ。

「オレゴンの時は誰も知らない状態で行ったのですが、ブダペストではほかの選手と微笑み合えるくらい距離が近づいた感じがあって。日本記録を出して参加標準記録を突破したことで、『ここにいていいんや』って思えたのが、去年にはない感覚でした。

 今回は2本ファウルして3本目に追い込まれたのですが、去年だったらそもそもファウルが怖くて守りに入っていただろうなって。結果にはつながりませんでしたが、その度胸がついたのは成長かなと思っています」

 ブダペスト世界選手権を終えた後には、世界のトップ選手が集う陸上界最高峰の舞台・ダイヤモンドリーグへの初出場が決まるといううれしいサプライズもあった。今季だけで多くの海外試合に参戦したが、「6m80〜90台の記録を持つ選手と高いレベルで競り合う経験はまだ積めていません」と反省点を挙げる。

 秦がまず課題に挙げるのが、1本目にしっかりと記録を残すこと。今季は序盤の試技でファウルが続き、そこから徐々にズレを埋めていくような展開が見受けられた。

「ファウルをしないために、自分では意図せずに助走を緩めてしまう感覚もありました。1本目からしっかり出力を出すこと、そしてファウルをしないことを同時に進めていかなきゃいけないと思っています。そのためには、助走のスタート位置の調整とかではなく、脚をしっかりさばけるような練習をしていく必要があります。昔は走りがちょこちょこしていたので刻めていたのですが、今は走りが大きくなった分、脚を細かく動かせなくなってしまっています。踏み切り前の最後3歩で早くさばけるようにしたいと思いますが、ファウルを気にしてばかりいると自分の良い跳躍ができなくなるので、良い塩梅で取り組まなければならないとも思っています。難しいですけど、成長した姿を想像すると楽しい気持ちになれますね」

1・2本目で記録を残すことを当面の課題に挙げる photo by Murakami Shogo1・2本目で記録を残すことを当面の課題に挙げる photo by Murakami Shogoこの記事に関連する写真を見る

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