「高橋尚子さんになりたい」マラソン安藤友香が「最後の大きなレースになるかもしれない」パリ五輪に秘めた決意

  • 佐藤俊●文 text by Sato Shun
  • photo by 森田直樹/アフロスポーツ

【高橋尚子さんのように強いランナーに】

 その勇気を振り絞って走るMGC10月にやってくる。前回は、自分に負けて勝負ができなかったが、今回はライバルたちに真っ向勝負を挑む。

「確実に成長している自分を感じていますが、ただペースメーカーがいないので、どういう展開になるか分からないですよね。どんなことが起きてもそこに対応できるだけの能力が必要になってくると思いますが、そこで一番大事なのは気持ちですね。

 MGCは、確実に2番以内に入ればいいんですけど、2番ではなく、優勝を狙っていかないと2番以内には入れない。2番でいいとなると、たぶん3番になってしまう。きっとタイムも同じで自己ベストの2136秒を破りたいではなく、日本記録の19分台を出すぐらいの気持ちで走らないとダメだと思っています。MGCでパリ五輪の代表権を勝ち取るのがベストですけど、勝っても負けてもこれ以上はやれん。全部出し切ったというレースをしたいですね」

 前回のMGCの経験を活かしたいと安藤は語るが、2位内に入ればパリの灯が見えてくる。

 安藤にとって、パリ五輪は、どういう舞台になるのだろうか。

「パリ五輪が自分にとっては陸上人生の集大成、最後の大きなレースになる可能性は高いです。だからではないですけど、やっぱりパリには行きたい。ここまでいろんな人にお世話になりましたし、チームスタッフにもたくさん助けてもらいました。戦うのは私ですが、応援してくれる人たちのために恩返しをしたいですし、頑張りたいですね」

 安藤は、パリを走れたら絶対に勝ちたい、メダルを獲りたいという。理想のマラソンランナーになるためには、結果は不可欠だからだ。

「私がマラソンで一番最初に感動したのは、シドニー五輪で高橋尚子選手が金メダルを獲られた時なんです。同じ岐阜県出身ですし、スゴイ憧れました。強い選手は速いだけではなく、コンスタントに結果を出すランナーだと思いますし、高橋さんは速さというよりもまさに強い選手でした。私は、そういうランナーになりたいとずっと思っています」

 これだけ結果を出してきて、「強さも身に付けているのでは」と言うと、安藤はキリッとした表情でこういった。

「強くないですよ。凡人です」

 MGC前、最後のレースとなったホクレン千歳大会では5000m152274で駆け抜け、士別ハーフマラソンも3位に入るなど変わらずに安定した結果を残し、順調に調整を続けている。今までの安定感をなぞりつつ、ラストに勇気を振り絞ることができれば、安藤は凡人ではなく他を圧倒する「強さ」を見せてくれるはずだ。

プロフィール

  • 佐藤 俊

    佐藤 俊 (さとう・しゅん)

    1963年北海道生まれ。青山学院大学経営学部卒業後、出版社を経て1993年にフリーランスに転向。現在は陸上(駅伝)、サッカー、卓球などさまざまなスポーツや、伝統芸能など幅広い分野を取材し、雑誌、WEB、新聞などに寄稿している。「宮本恒靖 学ぶ人」(文藝春秋)、「箱根0区を駆ける者たち」(幻冬舎)、「箱根奪取」(集英社)など著書多数。

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