フィギュアスケート男子のミラノ・コルティナ五輪代表「3人目」はどうなる? 三浦佳生が好スタート
【魔物が棲む全日本の緊張感】
12月18日、東京。全日本フィギュアスケート選手権、前日練習を終えた男子シングルの選手たちの顔つきは、一様に明るかった。ミラノ・コルティナ五輪出場をかけた大会だけにプレッシャーがかかるが、その現実と折り合いをつけているように見えた。
「自分の調子がよかったのもありますけど、周りの選手たちもバンバン4回転とかを跳んでいたので楽しいなって思いました。全日本に向け、みんな仕上げてきたはず。おかげで自分も楽しめているし、いい感じで来られていると思いました」
三浦佳生は笑顔で言って、ひりついた空気も楽しんでいるようだった。
全日本選手権SPで2位発進した三浦佳生
もっとも、不安や緊張はじわじわと刻々と襲いかかる。とくに五輪出場を巡る3つの枠を争う選手たちが、本番で重圧を感じないわけがない。全日本という最高の舞台、長いスケート人生の積み重ねがほんの数分、もしくはほんの数秒で一瞬にして失われる。その恐怖と背中合わせなのだ。
「魔物が棲む」。なかでも全日本は、特別な作用が生じる空間と言える。五輪シーズンは「優勝者は五輪出場」という特典もあり、波乱が起きる空気が醸成される。
「僕以上に、みなさんは五輪出場がかかって緊張すると思います。僕も同じ緊張を味わって、4年後に選ばれるように」
ジュニアの中田璃士は明るい声で言った。年齢制限で五輪出場がないからこそ、少年は緊張の予兆を敏感に感じ取っていたーー。
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著者プロフィール

小宮良之 (こみやよしゆき)
スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。

