フィギュアスケート男子のミラノ・コルティナ五輪代表「3人目」はどうなる? 三浦佳生が好スタート (3ページ目)
【引退って言ってないのに......】
一方、ベテランの領域に入った友野一希が三浦を追う。
友野は会場の空気を味方にしていた。それは彼が長く生きてきたスケーターとしての歴史のおかげか。前日取材で、「スケート人生を、生きざまを刻み込めるように」と話していたが、まさにそんな2分40秒だった。
始まってすぐに巻き起こった手拍子のなか、4回転トーループ+3回転トーループを降りる。4回転サルコウは耐え、スピンの出口でまさかの転倒も、うっとりするようなトリプルアクセルを成功させた。
演技直後、友野は苦笑いを浮かべたが、万雷の拍手と振られるバナーに励まされたように、晴れやかな面持ちになった。88.05点で、佐藤を上回る4位スタートだ。
「今日の会場の雰囲気は、演技前に泣きそうになるくらいでした。こんなに温かい応援があるのかって。もう話すだけで泣けてくるんですけど......」
演技後、友野が話す声はかすかに震えていた。感極まるような演技は、彼が氷上で生きてきた証だ。
「92点くらいいきたかったんですけど、スピンの取りこぼし、転倒が響きましたね。スピンは(ジャッジが)厳しいって聞いて、めちゃくちゃ丁寧にクラスターも踏んで、自分だけは大丈夫と思っていたんですけど(苦笑)。フリーはたくさん練習してきましたし、大丈夫だと思います」
決然と語った友野は、"恩返し"が自分の道も切り拓くことを信じていた。
「全日本で『引退』って言っていないのに、チーム勢ぞろいで。引退させられるのかなって(笑)。それだけ応援してもらえているのは感じていますね。幸せを噛み締められるくらいには滑れているので。どんな結果でも幸せと思えるはずで、最後に『この人、スケートが好きなんだな』っていうのがみんなに伝わるように」
それはひとつの誓いだった。
3人目の座を誰が奪うか。ほぼ一騎打ちの様相を呈してきたが、全日本は最後まで予断を許さない。
「すべてを出しきっても難しいスタートになってしまいましたが、いろいろ考えずに練習してきたことを出しきりたいと思います」
82.21点で6位の山本草太も、フリーで一縷の希望にかける。何が起こってもおかしくはない。
12月20日、フリー最終グループは夜8時過ぎからの滑走になる。
著者プロフィール

小宮良之 (こみやよしゆき)
スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。
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