「日本人選手は弱いから」。井上大仁が
語る「強くなりたい」という覚悟 (5ページ目)
実業団でメディアに取り上げられるのは、相当な狭き門である。中・長距離では日本記録を出す、もしくは海外の主要大会で優勝するか、マラソンで勝つぐらいしかないのが現状だ。ニューイヤー駅伝で優勝しても、箱根駅伝優勝チームのように、テレビ番組をはしごするようなことはない。
メディアでの露出が限られるなか、自らツイッターなどのSNSで発信し、陸上界を盛り上げていくという考えはないのだろうか。
「自分からSNSに上げることはないですね。誰かが僕の情報を求めているとは思わないので(笑)。ただ、大迫(傑)さんとか"山の神"とか、有名な選手が練習風景とか走り方とかを発信して、陸上に興味を持ってくれる人が増えるのはありがたいです」
2021年1月1日、山下は初のニューイヤー駅伝に挑む。前回、三菱重工は井上が4区で区間新の快走を見せたが、ブレーキの区間が頻発し、チームは17位に終わった。今回、雪辱を晴らすには出場選手がベストな状態で戦わなければ厳しい。なにより求められるのが安定感だ。箱根駅伝2区を3年連続で走った山下の走りは、非常に重要になってくる。
「本当なら4区の長い距離を走りたいのですが、いま井上さんを超える走りができるかと言われると、ちょっと無理です。今回は5区かなと考えていますが、どの区間でも活躍できるように頑張りたいです」
そんな山下が思う理想の選手は、大塚祥平(九電工)だという。
「大塚さんは僕が大学1年の時に4年の先輩だったんですけど、強いし、絶対にはずさないんですよ。タイムは井上さんのほうが速いんですけど、MGCで4位になったように、レースで強さを発揮する。僕はレースで絶対に外さないことを目標にしているので、大塚さんはまさに理想です」
大塚のようになるには、まずはチーム内で越えなければいけない存在がいる。
「今は無理ですけど、井上さんが元気なうちにできるだけ早く勝ちたいですね。35歳になった井上さんに勝っても面白くないので(笑)。食ってやるぞ、という気持ちを楽しんで、これからやっていきたいです」
そう語る表情には、たしかな自信が感じられた。
5 / 5