国枝慎吾が国民栄誉賞を受けた本当の意味「車いす利用者がもっともっと受け入れられるように...」 (4ページ目)
ただ逆に、(小田)凱人や(上地)結衣ちゃんが出てきて、これから車いすテニスを盛り上げていく人たちにバトンタッチしてもいいかな、と思えるタイミングでもありました」
── そのようななかで、先月には国民栄誉賞を受賞されました。これまでの国枝さんの実績や理念が国から認められた、という思いはあるでしょうか?
「そうですね。それも思いましたが、同時に思ったことは、僕が車いすテニスを始めた時に、すでにそれが可能な環境があったということです。その事実に、ものすごく感謝しました。
僕が始めた頃(1995年)には日本に車いすテニスの大会がすでにいくつかあり、TTC(吉田記念テニス研修センター)に車いすテニスプログラムがあった。それがなかったら、おそらくテニスそのものをやってなかっただろうと思います。
本当にそれまでやってきた先人の選手たちや、その活動をサポートしてきた方々がいたからこそ、こうして最後に国民栄誉賞をいただけた。受賞式でも言いましたが、本当にそういった人たちの頑張りがここにつながったんだなと、心から思いますね。だからこの賞は、自分がもらったというよりは、そういった方々と一緒に受賞したという思いが何より強いです」
── 日本における車いすテニスの環境面、ということではどうでしょうか? まだ行政区によっては、車いすの使用を禁じているテニスコートも少なくないと聞きます。
「そうですね......もちろん車いすが使えるコートがもっと増えるほうがうれしいです。うれしいですが、それでも僕が車いすテニスを始めた30年前に比べたら、相当、使えるようになったと思うんですね。
だから、使えないことを批判してしまう風潮はありますが、同時によくなってきたことを認めてあげなきゃフェアじゃないかな、とも思います。ひとつのダメなところを批判することで、10あるよくなったところを見ないというのは、アンフェアだというか。
日本のなかでも車いすテニスができる環境がいろんな場所で増えてきて、全体としてはポジティブだと思うんです。たとえば、凱人は東海地区を拠点として強くなったし、結衣ちゃんは兵庫県ですよね。30年前は、選手が出てくるところといったら、ほとんどTTC(吉田記念テニス研修センター)だったんですよ、そこしかなかったから。
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