しっとりと、そして力強く...坂本花織がシャンソンで新たな表現世界に挑戦
『ファンタジー・オン・アイス2025』レポート 前編
【シャンソンナンバーに挑戦】
5月31日、6月1日に幕張メッセ(千葉市)で開催されたアイスショー『ファンタジー・オン・アイス』。昨年のこのショーでは、シンガーソングライターのフレイヤ・ライディングスが歌う『Poison』で曲の心象風景を描写する新境地のスケーティングを披露した坂本花織(シスメックス)だったが、今回はシャンソンに挑戦、さらなる新しい表現世界を見せてくれた。
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振付師ブノワ・リショーの協力も得てプログラムと滑りを磨き、2022年には北京五輪で銅メダル獲得と世界選手権優勝にたどり着いた坂本。翌季からの3シーズンは、振付師をマリーフランス・デュブレイユやロヒーン・ワード、ジェフリー・バトルに替えて新ジャンルにも挑んでいた。
そうした期間を経て、昨季最終戦の世界国別対抗戦を終えたあとに、坂本はプログラムについてこう語っていた。
「タンゴの『Resurreccion del Angel(天使の復活)/La muerte del Angel(天使の死)』だったり、(映画)『シカゴ』の『オール・ザット・ジャズ』をやってみて、自分は意外と速い動きが苦手だと感じた。やってみて気づけたことだし、やってよかったなっていう部分もありました。だからこそ来シーズンは、動きで見せるというよりは本来のスケーティングで勝負したいなと感じています」
勝負の五輪シーズンへ向け、5月のゴールデンウィーク明けから新プログラムの振り付けに取りかかると話していた坂本。今回のファンタジー・オン・アイスで披露したのは、『Non, je ne regrette rien(水に流して)』。1960年にフランスのシャンソン歌手エディット・ピアフが歌ったヒット曲で、「私は何も後悔しない」と人生を強く生きる女性の物語だ。
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著者プロフィール
折山淑美 (おりやま・としみ)
スポーツジャーナリスト。1953年、長野県生まれ。1992年のバルセロナ大会から五輪取材を始め、夏季・冬季ともに多数の大会をリポートしている。フィギュアスケート取材は1994年リレハンメル五輪からスタートし、2010年代はシニアデビュー後の羽生結弦の歩みを丹念に追う。