しっとりと、そして力強く...坂本花織がシャンソンで新たな表現世界に挑戦 (2ページ目)
【メリハリある演技に会場がわく】
白い衣装でスローな曲調に乗ってゆったりと滑り出す坂本。しっとりとした流れのある滑りのなかでも、その身体から力強さがにじみ出て、プログラムを伝えようとする思いの強さを感じさせる。ダブルアクセルを跳び、歌詞がはじまるとフランス語のリズムに共鳴するように上体を大きく使って、3回転ルッツも跳ぶ。
この3回転ルッツは彼女がずっと苦手とし、エッジエラーの判定になることも多かったため、以前は極力回避していたジャンプだった。その後、得点を取るために入れるようになっていたが、昨季はフリーでさらなる得点力アップのため、基礎点が1.1倍になる演技の後半を含めて2本を入れていた。
つづくコンビネーションスピンのあともメリハリが効いた滑りで、大きくスピード感のある滑りから、最後はレイバックスピンで締め、会場をわかせた。
今回のファンタジー・オン・アイス、坂本はオープニングでも最後に紹介される座長格の存在。グループ演技『Cinema Italiano』では、宮原知子やアンサンブルスケーターとともに、チャ・ジュンファン(韓国)や中田璃士などを誘惑する役割を演じ、メインスケーターとして華やかなプログラムを演じた。
さらに、フィナーレでは、ゲストアーティストである俳優の城田優やほかのスケーターとの氷上ミュージカル『ダンス オブ ヴァンパイア』を盛り上げる役割も果たしていた。
自身、集大成ととらえる新シーズンへ向け、自分をさらに磨き上げて勝負しようと決意する坂本は、今回のアイスショーでもはつらつと存在感をアピールしていた。
著者プロフィール
折山淑美 (おりやま・としみ)
スポーツジャーナリスト。1953年、長野県生まれ。1992年のバルセロナ大会から五輪取材を始め、夏季・冬季ともに多数の大会をリポートしている。フィギュアスケート取材は1994年リレハンメル五輪からスタートし、2010年代はシニアデビュー後の羽生結弦の歩みを丹念に追う。
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