検索

【ミラノ五輪】高梨沙羅「飛ぶ直前まで寄り添ってくれた」 団体で力を発揮する「日本らしさ」 (3ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Yoshiyuki Komiya

 今回のオリンピックでも、日本(髙木美帆、佐藤綾乃、野明花菜、堀川桃香)は準決勝に進出。スピードスケートの盛んなオランダのファンが大勢駆けつけた会場はオレンジに染まっていた。そのなかで激闘を繰り広げたが、本当にわずかな差で決勝には届かなかった。しかし、3位決定戦ではアメリカを一糸乱れぬチームワークで下し、銅メダルを勝ち取っている。

 団体についての議論は賛否が分かれることもある。

 フィギュアスケート男子シングルで絶対王者イリア・マリニンが失速したのは「団体のせいだ」という意見が少なくない。たしかに消耗を考えれば、個人戦を前にショート、フリー2本をやるべきだったかについて議論の余地はある。しかし、彼は犠牲を払っても金メダルに貢献したのであって、アメリカ人がまずはそれを賞賛できるかどうかだろう。本人に批判される筋合いはなく、胸を張っていいはずだ。

 一方、日本はりくりゅう(三浦璃来、木原龍一)が団体で2本を戦って銀メダルに貢献したうえで、個人は逆転で金メダルを勝ち取った。ショートは不覚をとったが、三浦は「自分たちを信じ続ける」と毅然と言い、それを周りも激励した。団体の銀を梃に波濤(はとう)を乗り越えたとも言えるが、これは日本特有のアイデンティティかもしれない。

「今回、ようやく楽しんで(オリンピックの)試合に臨めたと思います。前回大会でやってはいけないことをしてしまい、この場に戻って来られるとは1ミリも思っていなかったですが、仲間のおかげで戻ってこられて、団体のメダルも取ることができました」

 高梨は安堵したように語っていた。交錯する感情から解放された、菩薩のような表情だった。団体でスキージャンプ人生がひとつ実を結んだ、悟りだったのかもしれない。

著者プロフィール

  • 小宮良之

    小宮良之 (こみやよしゆき)

    スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。

3 / 3

キーワード

このページのトップに戻る