ロコ・ソラーレの吉田知那美は北京五輪で密かに苦しんでいた。「自分のことを信じられなかった」 (4ページ目)

  • 竹田聡一郎●取材・文 text by Takeda Soichiro
  • photo by JMPA

――スイス代表との準決勝を制して、日本カーリング史上初の五輪ファイナルへ。残念ながら敗れてしまいましたが、「ファイナル慣れ」というキーワードがフロントエンドのふたりからは聞かれました。

「それは、今後の課題になってくると思うんです。カーリングって、基本的には複数あるシートのなかでいくつもの試合が同時に進行するものですから、1シートだけの試合って、シーズンでも1度か2度くらいしか経験できないんですよね。その貴重な経験を多く得るには、強くあり続けないといけない、ということを改めて感じました」

――決勝戦を振り返って、吉田知選手個人として何か反省点はありましたか。

「欲張ってしまったんです」

――というのは。

「私は試合前にいつも、前の試合で出たミスを修正しようと、注意すべきことをひとつ、多くてもふたつに絞ってアイスに乗るんです。でも、あの日は全部、完璧にしたかった。すべてでいいパフォーマンスを見せたいって、欲張ったんですよね。

 ウエイトコントロールも、スイープも、ラインコールもぜんぶをほしがった結果、何ひとつできなかった。ファイナルだからなんですかね? そんな器用な人間じゃないことは、自分でもわかっていたはずなんですけど......。まだまだ精進しなくては」

――さて、五輪銀メダルを手土産とした凱旋試合とも言える日本選手権が始まります。残念ながら無観客での開催となりますが、テレビ中継などを通して多くのファンが観戦すると思います。どんな試合をしたいですか。

「私たちは決して国際大会でのメダルをたくさんもらっているわけではないので、メダルどうこうというのはあまり意識していないかもしれません。銀メダルをいただいたのは本当に光栄ですが、それよりも『ロコ・ソラーレの、チーム藤澤のカーリングが好き』と言ってくれるファンが増えたことが本当にうれしいので、それに見合った、私たちらしいカーリングをお見せしたいと思っています」

吉田知那美(よしだ・ちなみ)
1991年7月26日生まれ。北海道北見市生まれ。2014年ソチ、2018年平昌に続いて2022年北京と、3大会連続での五輪出場は日本カーリング界初。このオフにしたいことは「クラフトビールの飲み比べ」。

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