スポーツクライミング野中生萌「本当にもう奇跡だと思います」。ケガで東京五輪絶望的から銀メダル獲得までの舞台裏 (4ページ目)

  • 篠 幸彦●文 text by Shino Yukihiko
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 そして大会を通して、自身の可能性を感じることができたという。

「自分のなかで可能性をぐっと広げられたと思います。スピードを4年前に始めて、今の自己ベストは数年前のスピードのトップ選手と同等レベルのタイムなんです。リードでも予選では金メダルのヤンヤを抑えて3位になることもできた。あらゆることに成長を感じられて、スピードも、ボルダリングも、リードも、もっと頑張ればもっとできるんだって、そう思えました。メダルの色は銀でしたけど、自分としては金にかなり近い頑張りはできたんじゃないかと思っています」

 スポーツクライミングは次のパリ五輪でも採用されることが決まっている。ただ、今大会とはフォーマットが変わり、ボルダリングとリードが2種目複合、スピードは単種目となる。パリ五輪はもう3年後、予選は2年後に迫っている。現時点で野中はパリまでをどう見据えているのだろうか。

「本当にたくさんの方が私のスピードに期待してくれているんです。ただ、東京五輪を経験してみて、3種目をトップレベルでキープする難しさもよく理解しています。自分としては挑戦したい気持ちはありますが、正直まだわからない。ただ、ボルダリングとリードの複合は間違いなく狙いにいこうと思っているので、次こそは金メダルを獲りたいと思います。こんどはケガのないように行きたいですね(笑)」

 パリまでの道のりもきっと平坦なものではない。それでも東京五輪という途轍もなく険しい山を乗り越えた野中は、さらに成長した姿でパリまで登りつめてくれるはずである。パリの頂を目指して、野中生萌の挑戦がまた始まる。

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