そうだったのか! 楢崎智亜が「無双状態」になるまでの進化の過程 (4ページ目)

  • 津金壱郎●取材・文 text by Tsugane Ichiro
  • photo by AFLO


 第1課題で目を見張ったのが、ゴール取りに出る前の動きだ。楢崎は小さなフットホールドにしっかり乗り込みながら重心を移動させて、ゴール取りに移行した。この見た目の地味な動きだけを切り出せば、世界屈指のスタティックムーブで課題をあっさりと完登した土肥圭太にも劣らなかったほどだ。

 競技中の選手は、自らが得意とする動きを選択する傾向が強い。以前までの楢崎なら、ゴール前でランジできる体勢をつくったら、簡単に飛び出してゴール取りを狙っていただろう。

 しかし、最大の武器であるダイナミックムーブに頼るのではなく、完登するために求められる動きを冷静に選んで実行した。そこに感心させられたのだ。

 ゴール取りでランジが求められた第2課題は、完登はできなかったものの、楢崎のバージョンアップしたスメア能力に釘づけになった。スメアとは、壁にシューズの底を押し当て、力を加えた刹那に生まれる摩擦力を登るために使うテクニックだ。

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