2020.05.25

内村航平が「魔物」を倒したロンドン五輪。
最後にやっと納得の演技

  • 折山淑美●文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by PHOTO KISHIMOTO

PLAYBACK! オリンピック名勝負―――蘇る記憶 第29回

スポーツファンの興奮と感動を生み出す祭典・オリンピック。この連載では、テレビにかじりついて応援した、あの時の名シーン、名勝負を振り返ります。

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 男子体操の内村航平は、19歳の時に2008年北京五輪に出場した。初めての五輪で、団体4種目に出場して銀メダル獲得に貢献。個人総合では、日本人トップの4位で予選を通過すると、あん馬で2度落下して24選手中最低の13.275点にとどまりながらも、残り4種目で順位を上げて2位になる底力を発揮した。日本人としては、84年ロサンゼルス五輪金メダルの具志堅幸司以来となる、メダル獲得だった。

ロンドン五輪体操の男子個人総合で、金メダルに輝いた内村航平 その後、内村は世界選手権で3連覇を達成。すべて完勝で、とくに11年は2位のフィリップ・ボイ(ドイツ)に3.101点の大差をつける勝利だった。そして12年ロンドン五輪は、世界中から「金メダル確実」と目される、充実しきった状態で迎えたのである。

 だが、その滑り出しは不安定だった。

 日本は04年アテネ五輪での優勝以降、北京五輪と4回の世界選手権で中国に勝てず、苦杯をなめてきた。目標は、団体優勝の奪還。そのためにも、予選では勢いをつけなくてはいけなかったが、日本チームは最初の鉄棒でミスを連発した。