IOCバッハ会長に聞く「リオ五輪で最も楽しみにしていることは?」 (3ページ目)
オリンピックでつくられる世界新記録は、そのひとつひとつが人類の進化に対する称賛だ。「より速く、より高く、より強く」というオリンピックのスローガンが、すべてを表している。
とりわけ、オリンピックで誕生するヒーローの多くは無名の人々だ。アマチュアリズムが求められなくなった今でも、オリンピックに参加するアスリートの大半は非常にまじめな学生のように毎日を過ごしている。彼らは誰にも知られず、ほんのわずかな金と引き換えに、長年にわたりオリンピックへの準備をする。
彼らが輝く瞬間が来ると、ジャーナリストたちは喚起する。2012年のロンドン・オリンピックでイギリスのボート選手ヘレン・グローバーとヒーザー・スタニングが金メダルを獲得すると、BBCのコメンテーターをつとめるアラン・グリーンは涙ながらに言った。「エゴにまみれていない人間が成功をつかむ姿は美しい」
ありがちな対比だ。一方に善きオリンピアンがいて、もう一方に強欲で甘やかされたサッカー選手や大リーガーがいる。名声と富を分配するシステムが、一部の人々に過剰な報酬を分け与えているという感覚は、広く共有されている。オリンピックはそんな感覚を、わずか17日間とはいえ忘れさせる装置だ。
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