本田真凜、全力演技で「恩返しをしたかった」語っていたスケーターとしての覚悟 (4ページ目)
【全日本はたとえ何もできなくても出たい】
その生き方が、今回の全日本で、自分やファンを裏切らない演技につながった。
「(SPの)2分50秒を滑りきることだけを考えてきたので、次のことは考えていません」
今回の全日本後に本田は言っている。
「2歳からスケートをして、ベテランと言われる年齢になり、思いきって強い気持ちで滑ることができました。公式練習では(ケガもあり)苦しくて何度も心が折れそうになりましたが、今年の全日本はたとえ何もできなくても出たい、というのがあって。最後まで全力で滑る自分を応援してくださった方に見せ、恩返しをしたかったんです」
演技後、彼女は嗚咽する口元を両手で覆った。万雷の拍手を浴びると、ひざまずいて感謝するように右手で優しく氷をなでた。ひとりのフィギュアスケーターの生きざまが映っていた。
「全日本が終わったあとも、氷には乗り続けたいです。今回もそうですが、いろいろ苦しいこともありましたが、スケートをしていたからこそ自分がいて。それは幸せなことです」
スケートに愛される彼女は、そう言って笑顔を輝かせた。この記事に関連する写真を見る
著者プロフィール
小宮良之 (こみやよしゆき)
スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。
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