本田真凜、全日本で「人生を表現したい」「感謝の気持ちはスケートで返すしかない」 (3ページ目)

  • 小宮良之●取材・文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 中村博之●撮影 photo by Nakamura Hiroyuki

【スケート人生を表現するプログラム】

 全日本を前にした曲かけ練習では、本田はSPの『Faded』を滑っている。3本ともジャンプはパスしたが、ステップの艶やかさが随所に目立った。

「(SPのテーマは)スケート人生の光と影というか、自分の小さな頃からの思いを曲に込めて滑りたいです。ハッピーなだけでなく、悲しい気持ちも混ざっているんですが。滑っていても気持ちが入り込み、滑りやすいプログラムで。自分のスケート人生を表現したいですね」

 本田は言う。思い入れが強いプログラムだ。

 一方、フリーは映画『マーメイド』でアリエルというキャラクターを演じる。今夏には人気アニメ『ワンピース』のアイスショーでビビというキャラクターを演じ、人気を博した。キャラクターを自分のものにできるのは異能と言えるだろう。

「『ワンピース・オン・アイス』で得た経験はすごく大きいです。私としては、試合ですごく弱さが出てしまうところがあって、自信がなくなってしまうんです。(ビビを演じることで)少し、その自信を取り戻すきっかけになりました。キャラになりきることで、その強さまでもらえるというか。自分が滑っていても楽しくて、キラキラしたプログラムなので、みなさんにも楽しんでもらえるようにしたいです」

 コレオシークエンスでのロングスパイラルは美しく、見ものだ。

「長めのスパイラルを、何百回も練習しました。どこから見ても、きれいに見えるように」

 彼女はそう言って、顔をほころばせた。

 スタートポジションでポーズを決めると、スイッチが入る。彼女は女優然としたところがある。アリエルの役柄に没入し、表情が一気に輝く。

「全日本では、フリーをたくさんのお客さんの前で滑って、笑顔で終わるというのが目標です。そこに向けて頑張っていきたい」

 まずはSPで十分にスコアを稼げるか。昨年は26位と低迷し、フリーに進むことができなかった。まずはフリー進出が目標になるか。

 12月22日、女子シングルのSP。本田は9年連続の全日本に挑む。第2グループ、8番目の滑走だ。

プロフィール

  • 小宮良之

    小宮良之 (こみやよしゆき)

    スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。

3 / 3

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る