宇野昌磨が見せた純粋と達観 鍵山優真との切磋琢磨を歓迎「互いがモチベーションに」 (3ページ目)
【自分自身が満足する表現】
「表現が何なのか、僕にもわかっていません。正解は、それぞれの人にあって、点数をつけるのは難しい。僕にとっては、ステファンのようなスケーターの表現ですが、それも好みで。だからこそ、僕は自分が満足する表現をしたいんです」
それが「自己満足」をテーマにする理由だろう。そのアプローチでも我流を貫く。
「試合は練習で何をやるべきか、あぶり出す指標」
彼ははっきりと言う。そのスタンスはマジョリティではない。天邪鬼にも映るが本心だ。
SP1、2、3位の選手が登壇した記者会見で、宇野は外国人記者に曲で繰り返される「I love you」という歌詞の意味について聞かれ、マイクを手にしながら答えに窮した。
「あんまり面白くない答えになりますけど、何も考えていないです。中身のある返しができないことを悔しく思いますが(苦笑)。洋楽ではよくあると思いますが......本当に何もなくて、すいません」
正直な青年だ。本当のことしか言えない。その純粋さが愛される。
11月25日、フリーは『Timelapse/Spiegel im Spiegel』で幻想的な音楽世界を再現できるか。表現者には格好の舞台だ。
著者プロフィール
小宮良之 (こみやよしゆき)
スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。
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