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宇野昌磨が見せた純粋と達観 鍵山優真との切磋琢磨を歓迎「互いがモチベーションに」 (2ページ目)

  • 小宮良之●取材・文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 能登 直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

【鍵山優真と切磋琢磨】

「(セカンドで)トリプルを跳ぶっていうのは、点数だけを追い求めなくなったという表われで。みなさん、あれだけ『トリプルを跳べ』って言っていたので、この結果でどうですかって?」

 そう問いかける宇野は、子どものように楽しそうだった。

「中国杯の時は、まだ状態が整っていなくて。『表現を頑張る』とは言うけど、実際に何ができるんだ、というのはありました。でも、NHK杯では練習をこなせていたので、それを出すことができたと思います」

 スコアは100.20点だった。演技構成点はトップも、4回転トーループ+3回転トーループが回転不足になり、点数を落とした。結果、105.51点をたたき出した鍵山優真の後塵を拝する2位で......。

「演技自体はよかったです。今できるものだったし、申し分ない。点数も悪くないです。表現に関し、中国杯よりも練習の成果が出せたかなと思いますし」

 宇野は淡々と言った。

「(順位については)それ以上の選手がいたということで。もっとできたな、と思わせてもらえるのは、いいことだと思います。競争は、見る分には面白いはずで、やる分にはたまんないですけどね(笑)。昔よりもヒリヒリ感というか、勝負そのものにこだわるより、お互いがモチベーションになれるように、とは思いますが」

 宇野は切磋琢磨を歓迎していた。ただ、誰かを倒したい、というのではない。あくまでフォーカスは自分自身だ。

「僕以上に(鍵山)優真くんの演技がすばらしかった。点数を超えるには、僕が完璧にやらないといけなかったですが、4回転+3回転が詰まった時点であやしいなって。それより、優真くんが再びこの地に帰ってきてくれてうれしく思います。2年前、彼に競技へのモチベーションに火をつけてもらいました。その時と同じく、僕が彼にとってのモチベーションになれる選手でいられるようにって」

 宇野は競争に対しては終始、達観していた。彼だけのもの差しがあるのだ。

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