時代の寵児となった桜庭和志。ヘンゾ・グレイシー戦で「まさかの結末」 (4ページ目)

  • 佐瀬順一●取材・文 text by Sase Jun-ichi
  • 長尾迪●撮影 photo by Nagao Susumu


 この日の西武ドームは、うだるような暑さだった。そんな過酷な環境下でも、桜庭とヘンゾの実力者同士の一戦は、まさに手に汗握る緊張感のある試合となった。

 2ラウンド終盤、誰もが「これは時間切れ判定かな」「延長ラウンド突入か」と思った矢先、桜庭はヘンゾにバックを取られる。バックを取られるのは、通常では不利な状況だ。だが、桜庭はここからの"切り返し"を得意にしている。

「残り試合時間1分!」

 アナウンスを聞いた桜庭は、一気に切り返してヘンゾの腕をひねりあげて、得意のアームロックの体勢へ。腕は完全に極まっているが、ヘンゾはギブアップしない。ただそれでも、少なくとも有利な体勢で試合を終えることができるという計算は、桜庭にもあったはずだ。

 しかしよく見ると、ヘンゾのひじが"おかしな方向"に曲がっているではないか。折れたというよりは、関節が外れている様子。桜庭がレフェリーにアピールすると、試合はすぐさまストップとなった。

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