石川祐希ら日本男子バレーがパリ五輪予選に向けて充実 メンタルの強さも備わった (3ページ目)
【厳しい場面も乗り越えるメンタルと対応力】
OQTでは最後の3戦(セルビア、スロベニア、アメリカ)が特に重要な試合になるが、そのうちスロベニアには、VNLのファイナルラウンド準々決勝でストレート勝ちしている。ただ、その試合でのスロベニアは、ケガや体調不良などで選手が数人抜けており、通常とは違うフォーメーションだったこともあって、石川は「まったく(OQTには)つながらないと思います」と口にした。
五輪切符を掴むまでは、それくらいの警戒が必要かもしれない。27年前、1996年のアトランタ五輪のアジア予選(4カ国による、東京とソウルでの合計6戦総当たり)で、日本はアウェーで韓国相手にストレートで圧勝。しかし、続くホームでの対戦は1-3とまさかの敗戦を喫して出場権を逃すと、その後の世界最終予選でも切符を掴めずに出場を逃した。
当時の日本は、前日本男子バレー監督の中垣内祐一が絶対エースで、荻野正二、青山繁といったバルセロナ五輪の6位入賞メンバーが揃っていた。今とは予選の形式も違うが、チーム力の高さ、ホーム開催という条件でも油断はできない。
五輪の出場権がかかる独特の重圧もあるのだろうが、今の日本の選手たちは、優勝したアジア選手権でメンタルの強さも見せた。開催地がイランだったため、準決勝のカタール戦、決勝のイラン戦では観客がブブゼラを吹き鳴らし、日本のサーブ時にはブーイングが飛び交った。さらに、日本が2セットを連取すると、3セット目には髙橋藍に対してペットボトルが投げ入れられる場面も。ベンチ陣も選手たちも怒りをあらわにして抗議したが、そこで我を失うことなく得点を重ねて勝利した。
また、会場がウルミアという標高が高い土地にあったため、ボールの弾み方の違いにも苦しんだ。特にリベロの山本智大は、いつもであれば拾えているはずのボールを上げられない場面も目立った。それでも試合が進むにつれて対応していき、決勝のイラン戦では好パフォーマンスを見せた。厳しい環境で勝ち抜いた今の日本であれば、ホームのアドバンテージにも浮かれず、しっかり自分たちの力を発揮して戦うことができるだろう。
カナダとの親善試合後、石川は「必ずみなさんと一緒に出場権を取ります」と力強く宣言した。OQTの観戦チケットはすでに完売。大きな声援の後押しを受ける日本が、パリ五輪へと飛翔することを期待している。
著者プロフィール
中西美雁 (なかにし・みかり)
名古屋大学大学院法学研究科修了後、フリーの編集ライターに。1997年よりバレーボールの取材活動を開始し、専門誌やスポーツ誌に寄稿。現在はweb Sportiva、バレーボールマガジンなどで執筆活動を行なっている。『バレーボールスピリット』(そしえて)、『バレーボールダイジェスト』(日本スポーツ企画出版)、『球萌え。』(マガジンハウス)、『全日本女子バレーコンプリートガイド』(JTBパブリッシング)などを企画編集。スポルティーバで西田有志の連載を担当
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