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「元・天才テニス少女」が引退を決意した切実な理由 森田あゆみ33歳「寝られない。腹筋1回すらできなかった」 (4ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki

【順風満帆なら見ることがなかった景色を後世に伝える】

 頑張りたいのに、頑張れない──。

 そんな彼女の言葉は文字にすると、意識と身体の乖離に苦しみ、終わりの時をどうしようもなく悟る、アスリートの哀切が行間に滲む。

 ただ、それらを口にする当の本人の表情には、悲壮とは無縁の晴れやかさが射していた。

「あとはもう、やりきったなって思いました!」

 清々しさを構成する因子は、このひと言にすべて込められているだろう。

 次のキャリアは、もう「指導者」と決めている。そう迷わず決意できたのも、「ケガをした経験が大きかったと思います」と彼女は言った。

 順風満帆のままにキャリアを終えたら見ることがなかった景色を、彼女は多く目に焼きつけてきた。その経験を後世に伝え、導いていく──。

 それが、かつての天才少女が今見る未来だ。

(後編につづく)

◆森田あゆみ・後編>>19年のキャリアに幕...天才テニス少女が歩み出す指導者の道


【profile】
森田あゆみ(もりた・あゆみ)
1990年3月11日生まれ、群馬県太田市出身。2004年、史上最年少14歳(中学3年生)で全日本テニス選手権ベスト8入りを果たし、「天才テニス少女」と呼ばれる。2015年4月には当時日本人最年少15歳1カ月でプロ選手となり、その2カ月後に全仏OP女子ジュニアで準優勝。日本人スポーツ選手として初めてアディダスとグローバル選手契約を締結する。2011年10月に自己最高の世界ランキング40位を記録するも、2014年から故障によって何度もツアー離脱を余儀なくされる。2023年8月に現役引退を発表。身長164cm。右利き。

著者プロフィール

  • 内田 暁

    内田 暁 (うちだ・あかつき)

    編集プロダクション勤務を経てフリーランスに。2008年頃からテニスを追いはじめ、年の半分ほどは海外取材。著書に『錦織圭 リターンゲーム』(学研プラス)、『勝てる脳、負ける脳』(集英社)など。

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