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大坂なおみ、涙の理由、そして引退を語る。「想定外のことが起きて、訳がわからなくなってしまった」 (2ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO

10日前の涙の理由を明かす

「相手(アストラ・シャルマ/オーストラリア)の情報はほとんどなかったけれど、サーブがいいことはわかっていた。自分のサーブの確率に満足している。セカンドサーブもよくて、相手に攻められることがなかった。

 リターンでは、『いいリターンを打たなくては......』と自分に言い聞かせていた。それは、全豪オープンで負けた試合ではリターンで消極的だった反省があったから」

 試合後の大坂は、6−3、6−4の手堅い勝利を淡々と振り返る。10日前のBNPパリバ・オープンの出来事も、「思い返せば、私は過去に野次られた経験がないことに気づいた」と述懐した。

「ブーイングはあったけれど、直接野次を飛ばされたことがなかった。想定外のことが起きて、訳がわからなくなってしまった」

 涙と心のメカニズムを冷静に分析する彼女は、「実は最近、ようやくセラピストと話を始めた」とも明かす。

「自分の進むべき道を示してくれる人が身近にいることは、すごくありがたいことだと思った」

 穏やかにそう語る彼女は、「彼女を自分のチームに招きたい」とも言った。

 今の大坂が、キャリアや人生のどの位置にいて、何を最大の目標やモチベーションにしているかは、多くのファンにとっての関心事項だ。

 今回、新たな声を取り入れる大坂の姿勢からは、再びトップを目指す向上心が感じられる。ただ、「ここからの私のキャリアは、言ってみればボーナス」との言葉の真意は、やや測りかねるところもある。

 そんな彼女の、ひとつの「理想像」の一端が、バーティの引退に言及した時、言葉の端々からにじみ出た。

「彼女の引き際は、理想的な姿。世界1位のまま去るのは、本当にかっこいいと思う。これ以上、何も証明することはない。自分がやりたいと思ったことは、すべて成し遂げたと感じたんだと思う」

 まるで、自分の夢を語るかのような大坂に、「理想的な姿」の詳細を重ねて尋ねる。すると、彼女はよどみなく、その内訳を語りはじめた。

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