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錦織圭、少年時代の純粋な
情熱は変わらず。10度目の全米OPへ (2ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by Getty Images

 追いかけた先達たちの、コートを去る背を幾度も見届け、そのたびに、あとに続く者への責務を背おう――。それらの思いをモチベーションとする彼は、同時に、「強い者と戦いたい」という少年時代と変わらぬ無垢さを、今も心に灯している。

 そんな彼の性向を最も端的に表わすのが、ロジャー・フェデラー(スイス)への思いだ。

「フェデラーだけは、ずっとやっていてほしいな、というのはあります。昔から自分のアイドルだし、今も目指している選手。いつでも試合をやりたいなと思っている」

 それほどまでに「アイドル」との対戦を切望する彼は、先のウインブルドン準々決勝でフェデラーと対戦した際には、「ロッカーからセンターコートに入る道の途中で、泣きそうになるくらいエモーショナルになっていた」と明かす。

 ワクワクした気持ちと、彼とウインブルドンで試合ができる高揚感――。それが、錦織の気持ちを「涙が出そう」なほどに高ぶらせた要因だ。

 そのような対戦相手への純粋な敬意と、好勝負そのものへの渇望は、年長者のみに向けられるものではない。現に錦織は、「今、一番試合したいのは、よっしーですね」と、誰に水を向けられるでもなく言った。錦織がここで言う「よっしー」とは、フロリダのIMGアカデミーの後輩であり、1週間前のシンシナティ・マスターズで敗れた23歳の西岡良仁。

「けっこうコテンパンにやられたので、リベンジしたいです」

 西岡の成長を肌身で感じ、その事実を喜ばしく思うからこそ、万全な状態で再戦したいとの想いは何にも増して強いのだろう。

 その西岡との対戦時、試合中にドクターを呼び、「思うように呼吸できない」と訴えていた錦織だが、懸念された体調面は「もう大丈夫」だと断言した。詳細は明かさなかったが原因も判明し、シンシナティ後の1週間、高温多湿のフロリダで濃密な練習を積めてきたと、表情に明るい色を灯す。

 もちろん、試合勘欠如への不安は残るが、それは1〜2回戦で戦いながら取り戻していく心づもり。その意味でも、初戦で当たるストローカーのマルコ・トルンゲリティ(アルゼンチン)は、「いい相手」だと錦織は言った。

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