2019.08.27

少女に戻った大坂なおみ。
全米OPの「セリーナvsシャラポワ」に心躍る

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO

 この地を訪れると、彼女は常に、ある種の心地よさとノスタルジーを覚えるという――。

 昨年、20歳にして多くの人々が待ち望んだ「若き新女王」の座を射止めた大坂なおみは、間違いなく今年の大会の顔である。

 しかも昨年の決勝の相手は、グランドスラム優勝回数の史上最多記録をかけて戦うセリーナ・ウィリアムズ(アメリカ)。ただ、その結末は、おそらくは多くの人が今も覚えているように、後味の悪いものとなった。

集まったファンに向けて笑顔で応える大坂なおみ 主審の判定に激高したセリーナが、暴言を重ねてゲームペナルティまで受けるという、USオープン史上もっとも物議を醸した頂上決戦。あれから1年の月日を経て、再び喚起される衝撃は、『ニューヨーク・タイムズ』紙が大会プレビューとして、あの出来事を再検証していることにも映される。

 エンターテインメントの発信源を自負するニューヨーク開催のグランドスラムは、街の熱を反映するように、開幕前から多くのイベントが開かれる。前年優勝者の大坂は、公開ドローセレモニーや記者会見、さらにはスポンサー関連のパーティなど、多くの催し物に足を運び、ファンが差し出すボールやパンフレットのひとつひとつにペンを走らせていた。

 それらは今や、テニス会場……とくに北米ならば、どこに行っても見慣れた光景。ただ、最近の彼女の言葉に耳を傾けると、その内面には、ここ半年ほどとは異なる心模様が広がっているようだ。

 世界1位に座したあとの今年5月、初めてのグランドスラムとなる全仏オープンが近づくにつれ、大坂は明らかにナーバスになっていた。

「どうしても、第1シードとしてグランドスラムを迎えたかったから……」

 それが、彼女の心を締めつけていた主要因。また、「キャリアグランドスラム(すべての四大大会を制すること)を成し遂げたい。できることなら、それを1年間で成し遂げたい」と、性急なまでに成果を求めてもいた。